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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (29)

講座だより

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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (29)

11/2022

「Pleural disease」

胸水や気胸はよくある病態ですが、胸腔穿刺が必要な症例は手技を多く行っている指導医の外来に優先的に紹介となるため、Fellowship中に経験する胸膜疾患は入院症例(呼吸器内科コンサルト・ICU)に偏っています。呼吸器・集中治療医としては避けては通れない病態ですが、臨床研究からのエビデンスがかなり乏しく診療科・医療者間でのプラクティスにばらつきが多い(Fellowとしては、指導医の指向を汲みつつ診療する必要がある)ため、個人的にはどちらかというと苦手意識のある分野です。さらにThoracic Surgery(胸部外科)とのすみ分けも曖昧なことが多いです。

胸水に関する相談は呼吸器内科コンサルトでは非常に多く、多くは主治医チームが鑑別に苦慮している胸水において「胸腔穿刺をするか否か」「胸腔ドレナージが必要か否か」まで含めて推奨を出すことが求められます。明らかに量が少なく穿刺ができない場合、両側性胸水でどう見てもfluid overloadで利尿薬で様子をみる場合などもありますが、複雑性肺炎随伴性胸水・膿胸や悪性胸水などが疑われる場合は必ず胸腔穿刺を行います。SMHには手技を専ら行っているProcedure teamやInterventional Radiology (IR) もあり種々の事情で手技ができないときは頼みますが、検査オーダーの漏れなどのコミュニケーションエラーのリスクもあるため、多くの場合は自分たちで胸腔穿刺・pigtail胸腔カテーテル・PleurX®(皮下トンネル式の留置型胸腔カテーテル)などの手技まで行い胸腔ドレナージの管理も適宜行うことになります。膿胸に対するtPA・Dnase胸腔内投与(MIST-2 trial: PMID: 21830966)も多くの指導医が好んで行っています。抗菌薬・胸腔ドレナージに反応しない膿胸の外科的治療、悪性中皮腫や結核性胸膜炎などの疑いで胸腔鏡検査が必要な場合はThoracic Surgeryにコンサルトすることになります。

自然気胸(基礎疾患のない一次性、肺気腫などを背景とした二次性とも)や外傷性気胸・血胸の多くはThoracic Surgeryで対処しているため、呼吸器内科として対応するのは多くが気管支鏡・胸腔穿刺などの合併症として発生した医原性気胸です。だいたいは12-14Frのpigtail胸腔カテーテルを留置してドレーンバッグを-20cmH2Oの吸引につないでおけば数時間以内にエアリークが止まり、翌日にはpigtailを水封として悪化しなければ午後には抜去できる場合が多いです。ICUでは緊張性気胸に出くわすこともありますが、20-24Frのlarge-bore chest tube(日本だと「胸腔ドレーン」や「トロッカー」と呼ばれているもの)には慣れていない呼吸器内科医が多く、長めの静脈留置針やSpinal needleを用いてneedle decompressionを行いつつThoracic Surgeryに応援を要請するという流れが多いです。自分で完結したいのはやまやまですが、肺炎随伴性胸水・膿胸や多くの気胸がpigtail胸腔カテーテルで管理可能というところで一般呼吸器内科医がlarge-bore chest tubeを挿入する状況は少なく、仕方ないのかもしれません。

これは以前妻が子供のパスポートを取得しにNYCの領事館まで行ってAmtrak (日本でいうところのJR) で帰ってきたときにRochesterの駅から撮った写真です。Rochesterのダウンタウンはそれなりに人口がありますが、子供連れだと博物館か動物園に行くぐらいです。

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