基礎研究
基礎研究
ここでは、我々の基礎研究の活動の一部をご紹介致します。
冬眠研究
救急・集中治療領域で扱うような急性期の病態において、これまでの様々な治療は生体への急激な侵襲に対するエネルギーの需給バランスにおけるエネルギー供給を改善させることに重きが置かれてきました。一方で、心肺停止蘇生後の患者に対して行うTTM(Targeted Temperature Management)に代表されるような、代謝を低下させエネルギー需要を低下させるような治療は、残念ながらほとんどありません。
我々は現在、このエネルギー需要を低下させる治療である「代謝抑制療法」に注目しています。
ところで、ヒト以外の一部の哺乳類や鳥類、両生類等は、代謝を低下させ絶食状態で食料の少ない冬季を乗り切る、すなわち「冬眠」することが知られています。実際、冬眠により非冬眠時と比べて代謝の指標の1つである酸素消費量が最大30%程度低下します。
我々は、2018年より神戸理化学研究所の冬眠研究チーム(砂川玄志郎 先生)と共同して、冬眠動物が有する代謝抑制システムを臨床応用するための研究を開始しています。
砂川先生らのグループは、2020年に非冬眠動物であるマウスを冬眠類似状態に誘導することに成功しました(Takahashi TM et al, Nature, 2020)。マウスの視床下部に存在するQRFP陽性細胞を特異的に興奮させることで、マウスの代謝・体温を数日間にわたって低下させ、冬眠類似状態を誘導しました。この人工的な冬眠誘導の操作であるQIH(Q neurons-induced hypometabolism)を土台にして、脳から末梢組織への休眠・冬眠シグナルの探索などメカニズムの解明に取り組んでおり、将来的には心筋梗塞や脳梗塞や敗血症などの生体に侵襲が加わる多くの急性期疾患への応用を目指しています。
我々の活動に少しでもご興味を持って頂けた方は、是非ご連絡下さい。