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Dr. Hiraoのハワイ奮戦記(8)

講座だより

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Dr. Hiraoのハワイ奮戦記(8)

今回はアメリカにおける集中治療(ICU)研修の実際について、特にハワイ大学内科プログラムでの経験を中心に書かせてもらおうと思います。

アメリカの大学病院では、ICUは診療科ごとに分かれていることが一般的で、Medical ICU(MICU)、Surgical ICU(SICU)、Cardiac ICU(CICU)、Neuro ICU(NICU)などが存在します。内科のレジデントは主にMICUとCICUを中心にローテーションを行いますが、NICUは神経内科のローテーションの一部として経験し、SICUについては選択制のローテーションで、希望者のみが回ることができます。

私が所属するハワイ大学内科プログラムでは、1年間に計8週間のMICUローテーションが組み込まれており、1日12時間のシフトで週6日勤務、週に1日の休みがあります。特徴的なのは、このプログラムには集中治療専攻のフェロー(専攻医)がいないという点です。他の多くの大学病院ではフェローが中心となって重症患者の管理や手技を行いますが、ハワイではレジデントが指導医とマンツーマンで働く体制がとられており、中心静脈ライン、動脈ライン、挿管など、手技を含む幅広い実践経験を積むことができます。これはハワイ大学の大きな魅力の一つだと感じています。

私は2年目のレジデントの際には必須のMICU 8週間に加えてStraub Medical CenterでのICUローテーションなども含め、合計で14週間のICU研修を行うことができました。

私が主に経験しているQueens Medical CenterのMICUは約20床あり、これをデイチームのレジデント2~3人で担当します。朝6時に出勤し、夜勤のレジデントから患者の引き継ぎを受けた後、8時半から指導医とともに回診を開始します。回診は11時ごろには終了し、その場で治療方針を固めていきます。オンコールの日には、その日の新規入院を担当します。午後には、多くの場合、指導医が30分程度のレクチャーを行ってくれ、集中治療に関する最新の知識や実践的なポイントを学ぶことができます。

夜勤はレジデント1人で対応します。すべてのMICU患者の継続管理に加え、その晩に入院してくる患者のマネジメント、必要な手技を指導医一人とレジデント一人で行わなければなりません。これまで2年間の研修の中で、私はこのMICUの夜勤が最も忙しく、かつ大変なローテーションだと感じています。忙しい日は一晩で新規患者が6人入院することもあり、膨大なカルテ記載や手技を一晩でこなす必要があります。大変ではありますが、成長を感じることのできる非常に密度の高い経験です。

また、ハワイ大学の内科レジデントはQueens以外にもStraub Medical CenterでのICUローテーションを選択することができます。StraubのICUの特徴は、MICU・NICU・SICU・CICUの全てが一つのユニットとして統合されており、多様な病態に対応する経験ができる点です。脳卒中後の管理や術後の集中治療、さらにはECMOやImpellaなどの高度循環補助の管理にも関わることができます。特に2年目に選択ローテーションとしてこのICUを回った際には、リーダーシップを担う「ミニ指導医」として多職種ラウンドの主導に携わる機会があり、医療チーム内での役割や調整能力について学ぶ良い経験となりました。

このように、アメリカにおけるICU研修は、ユニットの構造や病院によって大きく異なる特徴がありますが、ハワイ大学のプログラムは特に「手技ができる環境」と「実践的な裁量の多さ」という点で非常に恵まれていると感じています。

土曜の朝に開催されるモーニングマーケットのハンバーガー。
アメリカの食事は飽きますが、ハンバーガーは美味しいです。

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