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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(29)
講座だより
呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(29)
「Chronic Obstructive Pulmonary Disease⑦ Exacerbations」
あっという間に2026年になりました。2025年度はCOPD専門外来を7月から追加し、8月に呼吸器・集中治療フェロー(COPD)の前半期の講義、10月には医学生(PFT)、そして12月は関連病院のResidency Program(COPD)の講義を行いました。英語でレクチャーをするのは間違いなどがないか気を遣いますが、医学生とレジデントの講義は昨年度に続き2回目だったので、だいぶ抵抗なくできるようになってきたように思います。毎年のGOLD reportの更新に合わせたタイミングでスケジュールすると自分自身の知識のアップデートにもなり、一石二鳥でした。
研修医(レジデント・フェロー)のレクチャーはすぐに臨床で使える内容を優先してカバーしますが、それぞれのレベル・セッティングに合わせた内容を選ぶのに頭を使いました。UABの呼吸器専門医(フェロー・アテンディング)になるとより重症度の高いCOPDの外来管理に焦点があたってくる一方で、レジデント(Family MedicineやInternal Medicine)に求められるCOPDの知識は主に診断、比較的軽症のstable COPD、外来や病院で診るexacerbation of COPD (ECOPD: COPD増悪) 、そしていつ呼吸器専門医に紹介するかが重要と思います。特に、ICU以外のECOPDの入院はHospital Medicineで管理されることが多く、呼吸器内科医がコンサルトされない場合も多いので、COPD増悪の入院管理・外来への移行を漏れなく行えるよう重要事項をカバーするように心がけています。
COPD増悪の診断基準は従来のAnthonisen criteria (呼吸困難、喀痰量の増加、喀痰の膿性化のうち2つ以上) がよく知られており、重症度分類もmild (自宅で吸入SABAを増やす程度), moderate (外来でステロイドand/or抗菌薬による治療)、severe (入院) の3つに分かれていましたが、2021年に発表されたRome proposal (PMID: 34570991) を最近は使っています。「14日以内に起こる呼吸困難and/or咳嗽・喀痰の悪化」とよりシンプルな定義になり、重症度は大まかにいうとmildが従来のmoderate (外来でステロイドand/or抗菌薬による治療) 、moderateがバイタルサインの悪化等(呼吸困難visual analog score >=5, 呼吸数>=24, 心拍数>=95, 安静時SpO2<92%室内気 and/or 3%以上のベースラインからの低下、CRP>=10mg/L の5つのうち3項目以上)を伴うもので一般病棟レベル、severeがmoderateの基準に加えて呼吸性アシドーシス(pH<7.35 and PaCO2>45mmHg)を伴うものでICUレベルと、枠組みが少し変わっています。
治療に関しては、ABC (antibiotics, bronchodilators, corticosteroids) がメインで大きくは従来と変わりません。抗菌薬は、ECOPDと同時に肺炎などが起こっている場合は肺炎の抗菌薬(だいたいcombination therapy)を投与し、そうでなければ喀痰の膿性化がある、ICU入院の場合は何かしらの抗菌薬を投与、どれも当てはまらなければ抗菌薬はなしでも可ということになっています。また、CRPが低ければ抗菌薬が必要ない場合が多いという研究もあります(PMID: 31291514; PMID 30880285)。気管支拡張薬は、入院では基本的に持参の吸入薬は全てネブライザー投与に変更(ICS: budesonide 12時間毎、LABA: formoterol 12時間毎、LAMA: revefenacin 24時間毎)し、Duoneb (ipratropium-albuterol合剤) を6時間毎、Albuterolを2時間毎頓用とするのがルーティーンです。ステロイド(全身投与)は基本的に全例で投与するのですが、用量と投与期間は患者要因によって調整します。REDUCE trial (PMID: 23695200) に基づいて5日投与が14日に対して非劣勢ということがコンセンサスになっており、基本的にはprednisone 40mg 5日間としますが、喘息の合併があったり、ICUレベルの場合はIV methylprednisoloneを1日複数回投与で始めて治療反応をみつつ考えることも多く、色々です。末梢血好酸球数が低い場合はステロイドなしで抗菌薬のみでもよいのではないかという研究もありますが(PMID: 37924830)、まだまだスタンダードとしては受け入れられていません。他は、呼吸性アシドーシスがあればNIVや挿管を行うこと、退院時に呼吸器リハビリテーションに紹介することで再入院率、場合によっては死亡率が改善すること、をカバーするようにしています。
Stable COPDの診療はprecision medicine的なアプローチがだいぶ浸透してきましたが、COPD増悪はまだまだ研究が不足しています。ただこれからは上記のようにCRPや好酸球数などを指針に治療を選択するようになってくる可能性があると思います。米国では通常生化学のセットにはCRPは入っていないのでオーダーされないのですが、私は最近はECOPD患者では検査するようにして、どのような患者で高く治療反応がどう異なるのかというあたりの感覚を身につけたいと思っています。また、好酸球が高い(=T2 inflammation)ECOPD患者ではいきなり生物学的製剤を投与することも今後可能性としては考えられます。

学校の冬休みに合わせてシフトを調整し、road tripを計画しました。クリスマス翌日からは領事館での用事ついでに3回目のアトランタ観光でした。写真は251mもある巨大な花崗岩であるStone Mountainで、分かりにくいですが壁にレリーフも彫られています。無事に頂上まで行って帰ってくることができ、子供達の成長を感じました。