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Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(22)
講座だより
Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(22)
6/2019
「New Admission①」
さて、Residency 2年目も残り1か月となり、最終クールとなる6月後半は今年度3回目となる一般内科病棟Night Floatを拝命しています。Night Float Residentの仕事はいろいろありますが、最も重要なのは新入院をさばくことです。
夜間はほぼ全例がED(救急外来)からの緊急入院なので、初期評価は非常に重要です。流れとしては、ED physicianがまず入院を決定し、Medicine(内科)の入院を総括して受けるMAR(Medical Admitting Resident)というResidentに連絡をします。MARは簡単に患者情報を確認し、入院が妥当な場合はAdmitting TeamのうちどのResidentに担当させるかを決定します。担当が決まったResidentにはMARから連絡が入り、ED physicianからの申し送りを受け、EDのカルテ記載・検査結果・投与薬剤等をチェックし、患者さんの問診・診察をして、オーダーを入れ、H&P (History and Physical, いわゆる入院時サマリ) を記載します。
基本的に血行動態が不安定だったり人工呼吸が必要な患者はICUに入院するので、一般病棟に入院する患者は落ち着いており朝まで何も起こらないことも多いです。入院の理由は急性心不全、COPD増悪、消化管出血、尿路感染症、アルコール離脱症候群、などなど様々ですが入院時にはっきりしないことも多いです(意識障害、倒れていた、など)。
問診は型が決まっており、CC (Chief Complaint), HPI (History of Present Illness), ROS (Review of Systems), Allergy, Medications, Past Medical / Surgical / Family / Social History), と漏れなくどんどん聞いていきます。これに加え、PCP(外来主治医)が誰か、薬局はどこを利用しているか、緊急連絡先、Advance Directive (DNR/DNI等) の有無を確認します。
持参薬の確認は”MedRec (medication reconciliation)”と言われ、大事ですが完璧に把握している患者さんはまれです。だいたい外来カルテを確認したり、PCPや薬局に電話をかけて確認します。
Social Historyは鑑別を立てるのみならず退院を計画するのに非常に重要です。喫煙・飲酒・薬物歴は症例によって詳細に聴取します。たとえばアルコール離脱の症例ではかならず最終飲酒時刻、量、種類、離脱の既往があるかをききます(なぜかはわかりませんが、離脱で入院になる人は多くがウォッカを飲んでいる印象で、量は1-3 pint/日というのをよく聞きます。1 pint = 473 mLですから、なかなかの量です) 。薬物も同様で、heroin, cocaine, methamphetamine, marijuanaなどバリエーションが豊富で、使用経路もsnort (鼻から吸う)、smoke (タバコのように吸う)、IV (静注) のどれであるかで危険度が変わってきます。
また、必ず生活環境、福祉サービスの有無を確認します。具体的には、どこに住んでいるか(エレベーターがあるビル、エレベーターがないビル(”walk-up”)、介護施設、シェルター、路上)、誰と住んでいるか、出身はどこか、歩行は介助が必要か(杖、歩行器、車椅子)、HHA(Home health aide、日本でいうところの「ホームヘルパー」)や訪問看護を受けているか、などです。Homelessの人はshelterに行く手続きをするのに1日かかる、HHAが長時間必要な場合は退院時の再開の手続きに1日かかる、SAR (subacute rehabilitation, いわゆるリハビリ病院) に行く場合はMedicareだと3日間のinpatient stayが保険が下りるために必要、依存症の治療を希望する場合は医学的に退院可能な時点でDetox / Rehab(任意入院で依存症の治療を行う施設)に転棟する場合がある、など、医療制度が非常に複雑ですが理解しておく必要があります。
身体診察は内科なので基本的に網羅的に行い、もちろん鑑別診断に基づき適宜詳しく行います。Toxicology関連ばかりですが、瞳孔径、アルコール離脱での振戦や舌のFasciculation(線維束攣縮)、Heroin離脱でのGoosebumps(鳥肌)などは重要なポイントです。
5月はATS (アメリカ胸部学会) でTexasはDallasに行ってきました。John F. Kennedyの暗殺に関する博物館と、写真の記念碑がメインの観光でした。