About
Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(4)
講座だより
Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(4)
「内科一般外来」
今回はAmbulatory, 一般外来のローテーションについて書こうと思います。
内科一般外来では患者さんの健康全体を管理するPMD (Primary Care Doctor かかりつけ医) として働きます。伝統的には外来研修は週につき半日、他のローテーションの合間に行っていることが多いようですが、Mount Sinai Beth Israelでは8週間のうち2週間を外来のみとすることで外来研修に集中できるようになっています。患者層はNew Yorkの比較的下町に位置することもあって非常にバラエティに富んでいます。Hispanicの人が多いですが、最近はタイやコンゴから移民してきたという患者さんもいました。MedicareやMedicaidといった公的保険の人、つまりどちらかというとPrivateの保険を持てない貧困層が多く、Homeless shelterから来られる人もいます。世界中から人が集まってきて一生懸命暮らしているのだと感じさせられます。
診療の大部分は慢性疾患の管理・健康診断(予防接種・生活習慣病や悪性腫瘍のスクリーニング)に当てられます。急性疾患の診断治療はたまにある程度ですが、頭痛、排尿時痛、皮疹など比較的緊急性の低い主訴で急に受診する人もいます。
肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症の1つもない人を探すのは難しいぐらい生活習慣病はありふれています。中でも糖尿病は有病率50%ぐらいの印象です。HbA1C 6.5-10ぐらいまではPMDの守備範囲内で、インスリンを使いだすぐらいになるとEndocrinology (内分泌内科) に紹介することが多い印象です。他にもCKD (Chronic Kidney Disease 慢性腎臓病) や骨粗鬆症も毎日のように遭遇します。アメリカで内科研修をするとこれらの管理には相当強くなると思います。
アメリカではいわゆる職場の健康診断や人間ドックのようなものはなく健康診断はPMDの重要な仕事です。初診時にはHIVや梅毒・クラミジアなどの性感染症の検査、HbA1Cやコレステロール値のチェックを行い、50歳になったら何もリスクのない人でもマンモグラフィや大腸内視鏡検査によるがんのスクリーニングを行い、インフルエンザ、肺炎球菌やTdap(破傷風・ジフテリア・百日咳)といった予防接種に抜けがないかに目を光らせます。実際に適切な管理ができているかはともかく、予防医学に関しては日本よりも進んでいるように感じます。
受診できる枠は決まっており基本的に予約制ですが、キャンセルが出た場合には当日予約の方も来られます。最初は午前2人、午後2人からのスタートで最終的に午前6人、午後7人まで段階的に増えるようです。9時スタートなので、午前に6人といっても1人に30分はかけられる計算になります。日本の外来診療と比べるとたっぷり時間があるように思えますが、やることも多いので実際はかなりタイトです。新しく来た患者さんはまず長い問診票を埋め、医師は一緒にレビューしながら電子カルテの必須項目を埋めていきます。特に時間がかかるのが薬剤歴、喫煙・飲酒・違法薬物・性交渉といった社会歴で、カルテがチェックリスト形式になっているため聞く項目が多くなります。さらに糖尿病、うつ病などの疾患では別にチェックリストがありこれらを埋めないとカルテが完成しないのです。問診・診察もそこそこに病名をつけ、検査を入れ、処方を入れ、紹介状を書き、指導医に相談して一緒に診察、とやっているとすぐに時間がきてしまいます。限られた時間内でできるだけ適切な診療ができるよう、毎日しっかり予習をして外来に臨むようにしています。
写真はマンハッタンのとあるルーフトップバーからの風景です。屋上から摩天楼を眺めながら飲むお酒は、いつもより美味しく感じます。