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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (23)
講座だより
Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (23)
5/2022
「Medical ICU⑦Palliative Care Medicine」
内科医(呼吸器・集中治療はなおさら)をしていると、おのずとACP (advance care directive), 終末期ケアに関して考える機会が多くなります。呼吸器外来では肺がんの化学療法こそしませんが、肺がんやCOPDで死期が近い患者との治療方針の相談をすることはよくあります。ICUではもちろん、刻々と変化する重症患者の容態を正確に把握し、患者・家族の望むアウトカムをもたらす可能性が最も高い診療方針を提案する必要があります。もちろん基本的には患者・家族の意向を尊重し多くの場合は気管挿管や透析などの治療をすべて行いますが、容態の変化に応じて適宜話し合いを行い、推定される予後や患者の価値観などを加味して方針を微調整することが重要です。救命が不可能、侵襲的治療が有害なのが明らかならばDNR/DNI (do not resuscitate / do not intubate) が適切であることを説明し、症状緩和に重点をおいた治療方針に転換するよう勧めなければなりません。こうした話し合い (Family Meetingということが多いです) は多くの場合ICU FellowまたはAttendingが行います。管理的ポジションになればなるほど患者・家族とのコミュニケーションが重要になっていくことを実感しています。COVIDの影響で電話で話すのにも慣れてきましたが、理想的には出席者・時間を指定し実際に来院してもらってFamily Meetingを行うことが多いです。米国に来て日本との違いを感じたことのひとつに、Palliative Care (緩和ケア) チームがこうしたFamily Meetingに関わることが多いことが挙げられます。
少し調べると、Palliative Care Medicineは1970年代にカナダで初めて提唱された比較的新しい分野で、米国では1990年頃から徐々に浸透し、2006年にAmerican Board of Medical Specialty (日本でいうところの専門医機構) によって“Hospice and Palliative Care Medicine” が専門診療科として認められたようです。内科、小児科はもちろん外科、麻酔科、救急科、精神科など多くの診療科でResidency終了後に1年間のFellowshipを行うことで専門医受験資格を得ることができます。私はMount Sinai Beth IsraelでのResidencyの一番最後がPalliative Care Medicineコンサルトのローテーションでしたが、コンサルトの過半数は重症患者のGoals of care (治療のゴール) 設定の手助けをするというものでした。だいたいはHospital MedicineやICUの主治医チームが何度かFamily Meetingを行ったものの、家族とのコミュニケーション・治療方針の設定に難渋しているケースです。難しいですが、Empathy (共感的態度) などのコンセプトを意識しつつ、ある程度決まったフレーズを織り込むことで思ったよりもスムーズにいくことが多かったです。VitalTalkなどコミュニケーションを学ぶツールも充実しており、やっておくとFamily Meetingでは重宝します。Goals of careの設定以外には、おもに麻薬を用いた症状緩和(悪性疾患だけでなく、心不全・COPDなどでも)や、Hospiceの管理でも緩和ケア医が活躍している場面が多いです。
また、多くのPalliative Care チームでは専属のSocial Workerがおり、治療方針がComfort Measures Only (日本でBest Supportive Careというのと同じようなもの) に変更された際に院内のHospice病棟に転送する手続きなどサポートしてくれるのもありがたいです。Chaplainとの連携もスムーズで、身体的苦痛だけでなくSpiritual painにも対応することが常に意識されています。
ICUで働くにあたっては、家族とのコミュニケーションが難渋した際にPalliative Care Medicineに助けを求められるのはありがたいです。ICUの終末期ケアについては、終末期抜管、脳死判定、臓器移植といった重要なテーマがほかにも多くあるので次回以降にまとめてみたいと思います。
Strong Memorial Hospitalから少し歩いたところにCollege Townと呼ばれている学生街があります。Fellowshipの面接の際はここのHiltonに宿をとってくれ、好印象でした。写真はメジャーな本屋チェーンのBarnes&Nobleです。