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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(10)

講座だより

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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(10)

5/2024

「Medical ICU⑩ ICU Rounds」

今回はUAB HospitalのICUについてです。UAB HospitalのICUは以前も書いた通り専門科ごとに細分化されており、私を含む多くの内科・呼吸器系集中治療医(少し救急科出身もいます)が働いているのはMedical ICUです。普段はRed, Blue, Green, Goldの4チーム、冬季はOrangeが増えて5チームで回しており、各チームにAttendingが1人、患者が8-15人程度で、Attendingは大まかな診療方針を決めていくのとBilling (診療報酬請求) に必要な情報を漏れのないようにカルテ記載をするのが必須の仕事となっています。Red / Blue / OrangeはNP/PAが数人ずつ、Green / GoldはFellowが1人とResident (+Medical Student) が数人ずつおり主担当医として看護師などスタッフからのコールを受けたりオーダーを入れたりといった業務を担っています。Red / Blue Attendingは交代でMET (Medical Emergency Team) のコールをするので回診中にMETやCode Blueの連絡が入ると中断してそちらに向かう必要があり、とても忙しいです。MET / Triage Fellowというのが追加でおり、主な仕事は救急外来や病棟からの入室依頼を受けてチームの割り振りをすることですが、METに来てくれたりして助かることも多いです。成人のみで1207床という巨大な病院で救急外来・一般病棟だけでもものすごい数の患者がいるのと、他院からの転送を受けることも多く、突然前情報もあまりなくCriticalな患者が運び込まれてくることも稀ではありません。

Daytime shiftのときはAPP / Resident達は6時からおり、データ収集が一段落着いた7:30頃から回診を行うことが多いです。米国内でも施設間で違いが大きいところで、以前いたURMCでは必ず担当看護師が同席していましたが、UABでは主に主治医チーム+ICU薬剤師で順番にベッドを巡回していきます。担当医がプレゼンテーション、Attendingが患者を診察し必要なオーダーを入れたり患者・家族と話したりするのをすべての担当患者で繰り返します。プレゼンテーションはURMCではSystem-based、UABではProblem-basedで、一長一短ですがUABではICU Checklist(下記)を最後に確認することで漏れが少なくなるように考えられています(Clinical Director曰く、これを導入してから実際にICU Mortalityが減少したそうです)。私はまだまだ要領をつかむため試行錯誤しているため時間がかかりがちですが、それでも12人程度患者がいると急変対応など挟みつつ2-4時間程度で終わり、昼食の出るNoon Conferenceに間に合います。Residentチームは内科Residentがメインのため、人工呼吸器、鎮静・鎮痛、循環作動薬などのteachingを少しやりつつすすめていきます。最近の内科的知識や稀な鑑別診断なども挙げてきてこちらも勉強させてもらえることがけっこうありますが、ストレス潰瘍予防などのルーティーンに関する理解が不十分だったり、手技や急変対応など集中治療的なことはFellow, Attendingで介入していくことが多いです。一方、APPチームの方が普段からICU診療ばかりやっている人たちなのでルーティーンや中心静脈カテーテル等に関しては心配いりませんが、Airway・胸膜疾患関連の手技や、少し珍しい病態の鑑別診断や評価・治療方針に関しては医師でメインでやる必要があります。相手に応じてうまく質問を投げかけること、重要事項はあとで自分でもチェックすることが重要と考えるようになってきました。

 

UAB MICU Checklist:

  1. Antimicrobials (抗微生物薬): 日数、予定最終投与日、対象微生物、感受性
  2. Steroids: 漸減か中止か
  3. Prophylaxis (予防): DVT予防は全員、ストレス潰瘍は人工呼吸器、敗血症、熱傷、頭部外傷・脳卒中患者で
  4. Ventilated patient (人工呼吸器装着患者): 頭部挙上、SAT / SBT, Low tidal volume ventilation, Plateau pressure <= 30 cm H2O
  5. Central venous line (中心静脈カテーテル) 先端位置、抜去可能か
  6. Foley catheter (膀胱留置カテーテル): 抜去可能か
  7. Decubitus ulcers (褥瘡)
  8. Nutrition (栄養): ほぼ全ての患者で何かしらの経腸栄養を
  9. Glucose control (血糖コントロール) < 180 mg/dl?
  10. Discharge plan (退院・退室計画) 長期weaningが可能な病院への転院も考える
  11. Code status (DNR, DNI, etc.)


今年のATSはカリフォルニア州San Diegoで行われました。大きな海軍基地があり、第二次大戦以降に活躍した空母であるUSS Midwayが博物館として海岸沿いに停泊しています。甲板には何十もの戦闘機が展示されており見応えがありました。

 

前田徹朗

Respectfully,

著者