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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(11)
講座だより
呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(11)
5/2024
「Chronic Obstructive Pulmonary Disease ③Epidemiology」
COPDについては2021年(もう3年前です)に2回記事を書かせていただきましたが、UABに就職してからはメインの研究テーマとなりつつあるので自分の知識の整理も兼ねて引き続きたまに(他にネタがない時?)書いていきたいと思います。今回は疫学的なことを日本との国際比較も入れつつ少しまとめてみます。
GOLD (https://goldcopd.org/2024-gold-report/) によると、全世界的にはCOPDの有病率 (prevalence) は10.3% (2019年) とされており、High-income countryではたばこ喫煙、Low- and Middle-income country (LMIC) では屋外・屋内の空気汚染が主要な原因とされています。具体的には、PM2.5などの工業関連の大気汚染であったり、換気がよくされていない住居でのバイオマス燃料による調理などです。年齢(高齢)、性別(男性)、職業(粉塵曝露)、社会的要因(低所得、教育レベルが低い)によっても有病率は異なり、基本的には経済的に余裕のない人・地域で多い疾患といえそうです。遺伝性のものではα-1 antitrypsin欠損症が主要な原因となります。COPDは世界の死因の第3位であり、その数は年間300万人に上ります。
米国だけに限ると、2021年の統計では有病率が6.0% (PMID: 37971940) で。死因としては第6位になります(https://www.lung.org/research/trends-in-lung-disease/copd-trends-brief/copd-mortality)。COPDの増悪などによる入院は医療費の増加(年間400億ドル程度)につながるなど、医療経済的にも重要視されています。上記の通りたばこ喫煙が主要な原因ですが、地域によっては空気汚染の影響も多分にあると思われ、生活環境の改善も重要な課題です。air filterを参加者に配布してCOPD関連の症状の改善を示したRCTがあるほどです(CLEAN AIR study; PMID: 34449285)。州ごとの有病率の統計(2021年;PMID: 37971940)を見てみると、West Virginia州が11.8%で最も高く、Kentucky, Tennessee, Arkansas, MississippiときてAlabama州は8.6%で6位です。これはたばこ喫煙率のトップ層の州とだいたい一致しています(2019年: それぞれ23.8, 23.6, 19.9, 20.2, 20.4, 20.2%; https://www.cdc.gov/statesystem/cigaretteuseadult.html)ちなみに最も低いのはHawaii州で有病率3.0% (喫煙率: 12.3%) のようです。
さて日本はというと、21世紀に入ってからいくつかの疫学研究があり、有病率は10%程度と考えられているようです(PMID: 34277077)。多くの国でそうだと思いますが、underdiagnosis, undertreatmentも課題ということのようです。死亡原因としては10位以内には入っておらず、喫煙率も減少を続けている(2019年: 16.7%; https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/smoking/index.html)ので、多数の(とくにmetabolic syndrome絡みの)併存症も抱えて身体的・経済的困難、社会的孤立状態になることも多い印象がある米国のCOPDの状況よりは望みがあるのかもしれません。いずれにしても社会レベルでの呼吸器疾患の予防・治療に関する取り組みが最も重要と感じます。
5月末はジョージア州Atlantaまで約3時間運転して、5歳になる息子の日本国旅券の更新+家族旅行に行ってきました(アラバマ他いくつかの州はAtlanta日本国領事館の管轄です)。初めて行ったので主な見どころであるジョージア水族館と”World of Coca-cola”をまずは訪れる予定だったのですが、水道トラブルのためいずれも閉館か一部のみの展示となっており不完全燃焼でした。それでもやはり都会は楽しく、日本食の店もいくつか分かったので数か月以内にまた行こうと思います。