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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(13)
講座だより
呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(13)
9/2024
「Research」
最近、Divisionの上司と面談(年1回)がありました。昨年度の業績を入れてアップデートしたCV等の書類を送り、30分程度の面談で次年度に向けての方向性を共有する意味合いがあります。現在は主に臨床業務を通じて給料をもらっていますが、勤務医であると同時に大学教員なので、Service (診療自体に加え、病院・外来の管理業務など)、Education、Researchの3項目のうち1-2つで秀でた業績を残してpromotion (昇進) 審査に向けての準備を整えていくことが重要と折に触れて言われます。何とか学内の小型Grant (研究費) が取れたので(ほぼ上司のおかげです)、Researchを頑張ってPublicationや学外のGrantを増やしていくことが当面の目標です。
日本だと、臨床研修後に大学院に行って数年研究をしてPhDを取得する先生方が比較的多いと思いますが、アメリカでは卒業後に臨床をやりながらPhDを取得する人は稀有です(MD/PhDプログラムは多くの医学部には存在していますが、全Medical School卒業生のうちの3%程度のようです)。私はResidencyは市中病院で指導医も研究に強い人はいなかったのですが、とりあえずFellowship Matchのため、就職のためと思い、とにかく実地でやるしかないと思い日中は病院で働き夜や週末はデータ収集、適宜調べつつ統計解析、Electiveを論文執筆の時間にしてもらう、というようなことをやっていました。しかし子供も増え、臨床・研究ともに学ばないといけない内容も増え続け、片手間にやることがどんどん難しくなります。Fellowshipの間はトランスレーショナル研究をメインで関わっていたので、ラボでの実験は専門の職員の方に任せる形になりました。
Attending / Facultyになるまで深く理解していなかったのですが、大学で研究をメインでやろうと思うと、PI (Principal Investigator: 主任研究者) としてGrantを取って、人件費(自分の給料を含む)や実験機材の購入費を確保しないといけません。大きなデータを出し論文をPublishして次のGrantを取って…というサイクルを常に回していくことが求められるので、膨大な時間が必要で、そのためにはよいメンターにつき、Grantを確保しないと始まりません。たとえばNIHのK23 Grant (“mentored patient-oriented research career development award”) だと、最大5年間まで75%のeffortを研究に割くという前提があり、Salary supportが$100,000/年, Research supportが$30,000/年までとなっています。MDだとFellowshipを終えてから数年、PhDでは学位をとってからしばらく(Grantによりますが、だいたい10年ぐらい?)はEarly-stage investigatorなどと呼ばれ、比較的Grantをとりやすいです。逆に言うと年数が経つほど研究のサポートを得るハードルが上がってしまうということでもあり、早めに進めることが重要のようです。
私にとっての問題は、NIHなどの大型GrantはだいたいCitizenship (米国籍) あるいはPermanent residence (永住権) が必要ということです。J1 visa waiverのためあと2年以上は永住権がとれず、臨床のeffortが80%以上という縛りもあるため、難しいところです。今のところはできる限り臨床業務を効率的にやって時間を捻出しつつ、メンターの力を借りながら地道にできることをやっていきます。厳しい世界ですが、せっかく研究ができる環境にいるので頑張りたいと思います。
米国に戻ってから最近は家と病院の往復ばかりで良い写真がないので、日本滞在中に妻と行ったJames邸の写真を載せておきます。神戸市垂水区にあるきれいな洋館で、フレンチを頂きました。