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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(17)
講座だより
呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(17)
01/2025
「Medical ICU⑫ ICU Medications②」
前回に続き、ICUや病棟でよく使う薬剤について書いていこうと思います。
- 循環作動薬その2
前回はvasopressor (血管収縮薬) とinotropes (強心薬) について書きましたが、血管拡張薬や抗不整脈薬についてはまだでした。持続静注薬でよく使うのは急性心不全でnitroglycerin、他の高血圧緊急症ではnicardipineやclevidipineをよく使います。
Afib with RVR (atrial fibrillation with rapid ventricular response: 頻脈性心房細動) はとても頻度が高く、ICU内でもMET (緊急コール) でもよくあります。初動では血圧が保たれていればmetoprolol 5mg静注を5分毎3回まで試すのが基本で、あまり変化がなければdiltiazem静注(15-25mgぐらいを15分毎2回まで) を試します。血圧が低くて使いにくい場合はdigoxinとamiodarone静注が選択肢になり、静脈ラインがしっかりしていて既にICUにいる患者では個人的にはamiodaroneを基本的に選択しますが、一般病棟の患者でICUに動かす理由が他にない場合はdigoxinを使う場合もたまにあります。Esmololやdiltiazemの持続静注もたまに使いますがあまりメインの選択肢になることはない印象です。
Afib, Atrial flutter (心房粗動) 以外の不整脈はCardiac ICUで診られていることが多く経験が少ないですが、Vtach (ventricular tachycardia) が頻発する患者ではamiodaroneに加えてlidocaineの持続静注を使うこともたまに遭遇します。もちろん電解質などは補正しつつCardiologyの当直医を呼びます。 - 利尿薬
以前も書いたことがあるかもしれませんが、米国ではhANPや、tolvaptanなどのバソプレシン受容体拮抗薬を利尿目的で使うことはほぼなく、とにかくループ利尿薬を効くまで使うといった感じです。初めて使う人ではFurosemideを40mg IV を12時間毎ぐらいで開始しますが、腎機能が落ちている場合は80mgや120mgを一発入れてみて反応をみることもあります。それでも反応がなく除水がすぐに必要な場合は、Bumetanideを4-5mg程度IVしながら血液透析目的に腎臓内科にコンサルトをかけていくのがよくあります。もともと内服がある人には内服量の2倍程度(例えばtorsemide 40mg内服している場合はfurosemide 80mg IV)を1日2-3回ぐらいで開始していきます。Furosemide, Bumetanideとも持続静注もたまに使います。浮腫が強く低Naや低Kが問題になっていない場合には、ループ利尿薬の投与30分前ぐらいにthiazide-like diureticであるmetolazoneを5mg経口で投与するというのもたまにやりますが、劇的に効果を実感することは少ないです。 - 輸液製剤
米国では輸液製剤の種類が少なく、維持輸液という概念もあまりありません(日本では今どのような感じなのでしょうか…)。UABではPlasmaLyte®は値段が高いからなのか採用していないため、細胞外液は基本的にはNormal saline (NS; 生理食塩水)、Lactated Ringer (LR; 乳酸リンゲル液) の2択です。高Ca血症や頭蓋内圧亢進状態のときを除き、多くの内科系集中治療医は高K血症だろうがLRを第1選択とし、residentが根拠なくNSをオーダーしようものなら目くじらを立ててSMART trial (PMID: 29485925) について説明します。D5W (5%ブドウ糖液) は使うことは少ないですが、低Naが急速に補正されそうになっているときには(場合によって、desmopressinも投与しつつ)ボーラス投与することがあります。腎不全、代謝性アシドーシスが重度の場合は重炭酸ナトリウム溶液(150mEq in 1L NS or D5W)を使うこともありますがなるべく漫然と投与しないようにします。日本での3号輸液にあたる維持輸液の製剤はありませんが、腸閉塞などで全く経消化管的摂取がない場合はD5W 1/2 NS with KCl 20mEq/L (5%ブドウ糖45%生食にKCl 20mEq/Lで混注したもの) を75-100ml/hr程度で流しておくとうまい具合に維持できることが多いです。
余談ですが、日本のようにクレンメの開閉で流量調整することはなく、一般病棟でもすべてシリンジポンプです(ボーラスは999/ml/hrにセットします)。例外は急速輸液・輸血のときで、A lineのセットアップで使うようなpressure bagを使ったり、Massive transfusion protocolが発動されたときにはBelmontやLevel oneといったrapid infuserを使います。
この間市民体育館のようなところでやっているクライミングに行きました。色々なテーマのものがあって子供達は楽しんでいました。