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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(9)

講座だより

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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(9)

5/2024

「General Pulmonary Clinic @Russell Medical」

この半年ぐらいでだいたいのローテーション・外来をこなしてきて、アラバマ州の地理や医療事情がなんとなく分かってきたように思います。4月の半分ぐらいはTele-ICUのローテーション(全貌が分かってきたら詳しく書きたいと思います)をしながら、今後の研究計画を進めています。もうすぐSan DiegoでATS (American Thoracic Society) の年次総会、その後は息子のパスポート更新のため領事館に寄るついでにAtlanta旅行、そして夏休みの一時帰国と楽しみなことが多くなってきました。

先日、少し久しぶりに関連病院であるRussell Medicalの呼吸器内科外来のローテーションをやってきました。同病院では常勤の呼吸器内科医(1人)が辞任することになってから私を含むUABの医師が交代で外来をやっていましたが、後任が見つかったため今回が最終週ということでした。以前も少し書きましたが、Russell MedicalはUABの関連病院で、UAB HospitalからはUS-280 (日本語でいうと、国道280号) を約90分南東に行ったところにあるAlexander Cityという人口約15000の街にあり、ベッド数は81床です。近くに呼吸器内科専門医の外来は約30分離れたSylacaugaという街と、約45分離れたOpelikaという街にあり、エリア分けがある程度出来上がっています。距離・予算とスケジュールの関係上、月曜から木曜まで午前・午後とも外来を行い、金曜は自宅あるいはUABから電子カルテチェック・必要な検査結果説明や処方を行うのみということになっています。初診は40分、再診は20分枠ですが、患者が問診表を埋めたり、看護師による予診とバイタルサイン測定の時間なども含まれるので体感的にはかなり短く感じます。特に、再診と言っても自分ではなく他の医師が診た人は情報を整理するのと重要なところは聞き直すので余計時間がかかります。1日に10人も診るとだいぶ夕方になっており、その後検査結果について電話で説明・カルテ記載・翌日の予習など行っているとかなり遅くなります。外来前に朝7時半から気管支鏡をしたこともあり、ホテルに泊まっていたので時間的にはなんとかなりましたが、個人的にはICUよりも大変なローテーションでした。全く余談ですが、US-280の制限速度は大部分で65mph (≒ 105 km/h) で、米国の広さを実感できるドライブになっています。

診療内容は、喫煙者・高齢者が多いのを反映してか初診は呼吸困難や咳嗽、たまに肺結節、再診は大多数がCOPD、OSA (閉塞性睡眠時無呼吸)、たまに喘息、気管支拡張症、ILD (間質性肺疾患)、肺癌といった感じです。初診では詳細な問診と、紹介されてきた理由に応じて何らかのアクションプランを立てるのがメインで、そこまで困ることはありません。慢性疾患の再診のほうがチェックする内容が多くて大変な印象があります。安定している患者では6か月から1年に1回のフォローアップのみなので、一度チャンスを逃すと患者の不利益につながります。症状の経過を確認し、最近行われたPFTやCTの結果を説明し、禁煙、吸入薬、低線量CTによる肺癌スクリーニング、予防接種あたりについて話しているとあっという間に20分終わってしまいます。カルテ記載は保険の請求の関係上、HPI, Physical Exam, Assessment and Plan (オーダー含む)とbilling codeあるいは診療に要しただいたいの時間を記載する必要がありこれも結構時間がかかります。

UABのメインの外来では基本的に再診患者は自分のところに返ってくるので予習の手間はだいぶ減りますが、いずれにしても1日に何十人も診るのは米国のシステムだと不可能であり、一般外来が全て予約のみになっているのも合理的と思います。一方で、急に具合が悪くなった患者は一応外来に電話で相談できますが診察しないと決められないことは多く(例えば、電話口の情報だけで抗菌薬や経口ステロイドを処方するのはよっぽど状況が明らかでない場合やりません)、そうした場合の受け皿はUrgent CareやEmergency Roomということになるので、特に専門医でないと手に負えないような疾患を持った患者は病気になると診てもらえるまでが大変というデメリットがあります。

Birmingham Botanical Garden (植物園) には日本庭園があり、桜まつりを毎年やっています。子供達はだいぶアメリカナイズドされてきましたが、日本の文化にも触れるように心がけています。

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