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「Bloody Day 〜タイでの外傷外科実習に参加して〜」 

講座だより

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Bloody Day 2015/05/01

今回、外傷外科トレーニングをタイで受けて来ましたので、ご報告いたします。
開催場所はタイのバンコクにあるChulalongkorn University。日程としては現地時間5/1 7:45〜17:00の講習で、午前が講義、午後が実技でした。
この実技の部分で使用する献体が、Soft Cadaver(軟らかい献体)であり、通常のホルマリンで処理された筋・臓器が萎縮し硬く固定されている献体と比べ、軟らかく、実際の生体に近いという事になっています。
参加の目的としては、
・献体を用いて外傷の処置を適切に行える様トレーニングする。
・Soft Cadaverと通常のCadaverの比較をしてみる。
という2点にありました。

 

今回の講習は佐賀大学の阪本教授のお声掛けがあり参加させていただきました。
当教室からは私と佐藤先生の2人で参加しました。
関空から約5時間半でタイ国際空港に到着、初日は他の大学の人と合流し食事をして終わりました。
翌日(5/1)は朝から会場に到着出来ずに迷いました。1時間以上さまよい、タクシーまで乗って、着いた場所はホテルから3分で着く場所、みんなでずっこけました。
気分を取り直し、午前の講義を聴きます。話はタイ語でしたが、スライドが英語のため,ある程度理解出来ました。
講義を聞いている人は男女比1:1くらいで、真剣に聞いている人も、そうでない人もいたので「医学生ですか?」と聞いたら「外科レジデントです」との事。タイでは外科医になる女性は多く、男女比1:1くらいだと言う事。どんな外科医(乳腺・消化器etc.)でも、どの病院(都会・地方)でも外傷を見る事になるのだとのこと、これはお国柄ですね。

講義内容は
Resuscitation in penetrating trauma
Penetrating neck injuries
Penetrating chest injuries
Penetrating abdominal injuries
Major abdominal vascular trauma
Damage control in severe abdominal trauma
Damage control in severe chest trauma
それぞれ30分で行われました。
午後は大学内のChula soft cadaver surgical training centerという、立派な場所へ移動し、献体を用いての実習です。日本チーム用に1献体準備してくださいました。soft cadaverは筋肉、皮膚、臓器が柔らかく、可動性があるためホルマリン固定の献体より実際の生体に近い感じは受けました。しかし、難点もいくつか。大きな難点としては血管がわかり辛いという事。静脈は元々血液が満ちていないと同定し辛いものであるので、今回も同定が難しかったのですが、動脈壁も柔らかく、テンションがある動脈の感触が損なわれているために、日頃ランドマークにしている血管が見つけられずにオリエンテーションがつき辛かった。もう一つの難点として、解剖していくにつれ、においが出て来た感じがするという事。お話では長時間の使用や長時間の保管には向かないという事でした。

実習は15分刻みで、各部位の説明を行い、解剖していく形をとっていました。折角の勉強の機会ですから丁寧にやっていたのですが、すぐ次のパートに移ってしまいました。時間に押されながらの実習だったのが少々残念でした。
夕方、皆で食事をし、深夜の便で日本へ帰国しました。

当初の目的の
・献体を用いて外傷の処置を適切に行える様トレーニングする。
は、もう少し解剖の時間をとりたかったと感じました。
・Soft Cadaverと通常のCadaverの比較をしてみる。
は、前述したような短所がありつつも、全体的にはホルマリン固定献体に比べ、より生体に近い点がとてもメリットを感じました。
今後も、このような機会を見つけて参加して研鑽を積みたいと思います。

最後に、我々の研修を受け入れてくださったタイのChulalongkorn Universityのスタッフの皆様、同行させていただいた佐賀大学の阪本教授、永嶋先生、日本医科大学の増野先生、そして自らの体を解剖のために提供してくださった方に深く感謝いたします。

(文責:邑田)

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