About

2011淡路島ロングライド

講座だより

Tap here to navigate

 吉田先生魂の激走をありがとう 2011淡路島ロングライド150に参加して
京大救急・自転車部 藤田俊史

去る10月9日救急・自転車部総勢8名は淡路島一周ロングライドに参加してきました。参加者は京大病院 鈴木先生 大鶴先生 私藤田と大学院生の下戸先生、 京都国立医療センターから参加していただいた中野先生、辻先生、吉田先生、三重から徹夜でかけつけてくれた戸上さんの総勢8名でした。

今回は雨に泣かされながらも全員完走した昨年の参加に引き続き二回目の参加であったこと、 また6月に琵琶湖一周160kmを参加者15人全員が完走したメンバー内の自信もあり、リラックスムードで大会当日を迎えることができたようです。 とは言え体の不調を訴える参加者も多く、朝4時起床、日の出と同時に6時の発走は日々多忙な生活を送る人間にとって少々厳しいものがありました。
スタート後、抜群の秋晴れの中、路面も自転車のコンディションも問題なく日常からの解放感とともに心地よく乗れたのは洲本港AS(エイドステーション)までの平地27kmまででした。 ASで振舞われた豚汁を楽しみ、大会スタッフにせかされて出発するとそこからの道程は予期しなかった過酷なものとなりました。



吉田先生は今回のメンバーで最年少でしたが、自転車のロングライドの経験も浅く、 医療センターの足の長い先輩から借りた若干サイズのあわない自転車に乗っての出走でした。出走前のそのやつれた表情からは医療センターでの不規則で過酷な勤務、 日頃の食生活の悪さがうかがわれました。日頃全くトレーニングを積んでいない彼にとって150kmは地獄のような距離であったかもしれません。最初の試練は峠越えでした。 淡路島の南半分はアップダウンの厳しい山岳コースが続きます。息が上がり、歩いて自転車を押して峠を登り終えると、 景色を楽しむ猶予を与えられず先輩にせかされて下り坂を降り、調整不足のバイクのクランクが外れるというアクシデントも周囲に助けられ、 ようやく59km地点の灘ASについたとき、すでに吉田先生の顔に色濃く疲労の表情が浮かんでいました。灘ASにはすでに水とパンしか残っておらず、 刻々とせまる足切りタイムに迫られて灼熱の日差しの下すぐに出発となりました。

そこから96km地点の慶野松原ASまでのコースは再び過酷な峠越えのアップダウンがつづき経験を積んだメンバーにとっても苦しい道程となりました。 脚がこむら返りを繰り返し峠を越えるたびに吉田先生の表情が苦痛で歪んでいくのがわかりました。しかし全員で完走を目標としたこの大会、 一人だけ残していくわけにもいかず、峠で吉田先生の到着をまっては再び出発を繰り返すこと十数度、メンバー全員の声援もむなしく、 やがて後方に吉田先生の姿が見えなくなってしまいました。
昨年の雨天のレースに比べ今回の高温下のレースでは体力の消耗が激しく、参加者全員が肉体的精神的に苦しい状況になったのもこのあたりでした。 慶野松原ASからゴールまで比較的なだらかな田園コース、海岸コースが続きましたが、写真を取る余裕も風景を楽しむ余裕もなくなり足切りタイムとの苦しい戦いになりました。 その中で最も印象に残ったシーンは失格の憂き目には会いたくないと制限時間に迫られそそくさと96km地点の慶野松原ASを出発しようとしたとき、 すでに失格になっていたかと思っていた吉田先生がうつろな表情で飛び込んできたことでした。すでに脱水と筋痙攣で歩くことも不可能な状態で、 転倒によりあちこちに生傷をおいながら吉田先生は追いついて来たのでした。医療人としての常識に基づいてリタイアを勧めた私でしたが、 吉田先生の心は折れていませんでした。医学的には休養と補液が必要な状態であったことは間違いありませんが、 休憩を与えられることなく吉田先生は最後まで執念の走りを続けました。 参加者2000人完走率90%を超える今回の大会で一番頑張ったのは間違いなく吉田先生だったと思います。
同じドラマは115km地点の多賀の浜ASでも繰り返されました。肉体の限界を超えて魂の走り続けた吉田先生にはただただ頭が下がる思いでした。 そしてついに国営明石海峡公園にて16:30の閉門直前に満身創痍の状態でフィニッシュした吉田先生の その表情には地獄を乗り越えて完走者となった自信と誇りがただよっていました。

快晴の淡路島を一周するとしてたくさんの美しいビューポイントがあります。しかしこの日何よりも美しかったのは吉田先生の魂のロングライド、 そして彼を見捨てることなく最後までサポートされた国立京都医療センターチームの師弟愛でした。 吉田先生を最後までサポートし並んでゴールインされた中野先生はルックスもさることながら人間として最高でありました。
大会参加にあたってER業務代わって担当していただいて救急部の先生方、大鶴先生をはじめ今回の企画を発案運営していただいたスタッフの先生方には この紙面を持って感謝の意とさせていただきます
大会が終わり全身の筋肉痛がようやく落ち着いたある日大鶴先生より再びお誘いがありました。 今後さらに練習を積んで佐渡島トライアスロンに参加しないかと。是非とも参加させていただきたいと思います。 その時には僕が魂のロングライドで完全燃焼したいと思いました。


著者