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Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(19)

講座だより

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Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(19)

3/2019
「Preventive Medicine③ – 悪性疾患のスクリーニング」

今回も外来での健康診断についてです。こちらでは悪性疾患に関しては自治体のがん検診のようなものはなく、PMDで色々な検査をオーダーします。日本にいたときは馴染みがなかったのですが、医学的なエビデンスに基づき推奨が決まっており必ず覚えないといけません。
女性は21歳になるとPap smear (PapはPapanicolaou (病理学者の名前) の略で、要するに子宮頸部細胞診) による子宮頸癌の健診が始まります。基本的に3年毎、30歳以上ではhigh-risk HPV (HPV16やHPV18など) の検査と同時に行うことで5年毎の検査を65歳まで継続します。実際に実施するのはGYN (婦人科) の外来になりますが、やっているかはチェックしておきます。
乳癌に関しては一般的には50歳、希望があれば40歳からマンモグラフィを1-2年毎に75歳まで行います。
大腸癌に関しては特に家族歴がない場合は50歳でスクリーニングを開始します。最も診断特性の点で優れるのはColonoscopy (全大腸内視鏡検査) であり、何も異常がない場合は10年毎の実施でよいためまずこれをすすめます。患者さんが抵抗がある場合はFOBT (fecal occult blood test, 便潜血検査) や、最近は便中の異常なDNAを検出する検査(FIT)もあり、そうした非侵襲的な検査法を提案します。
前立腺癌もよくある疾患ですが、PSAに関してはcontroversialで、あまり積極的には勧めません。一応50歳から測定を考慮する、とされています。
肺癌のスクリーニングは、胸部X線では行いません。やや複雑ですが、30 pack-year (pack-year: 1日の喫煙箱量×年数) 以上の喫煙者で、現在喫煙中または禁煙したのが15年以内、かつ年齢が55-80歳の場合、低用量胸部CTを1年毎に撮影します。
3回にわたって予防医学について書きましたが、CDC (Centers for Disease Control and Prevention) USPSTF (United States Preventive Services Task Force) といった連邦機関が出しているものを参考にして診療しています。外来で特に症状もない患者さんに様々な検査をすすめるのは大変ですが、重要です。麻疹、子宮頸癌、心筋梗塞といった予防可能な疾患が減少すれば日本の医療がまた少し変わるのではないかと思っています。

San Diegoに続いて、Albany (New York州の州都) でのACP (アメリカ内科学会) 地方会のDoctor’s Dilemmaというのにいってきました。病院対抗研修医クイズ大会といった感じの催しです。敗退してしまいましたが貴重な経験になりました。
AlbanyはNYCと違って人口10万人ほどの小さな街で、ゆったりしていました。Amtrakの車窓からは凍てついたHudson Riverが見え、アメリカの自然の豊かさを実感しました。

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