About

Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(27)

講座だより

Tap here to navigate

Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(27)

11/2019
「Multidisciplinary Team」

日本と比べるとアメリカではコンサルテーションや他職種とのコミュニケーションが多いとよく感じます。分業化が進んでおり各々が必要な役割を果たすことによって患者さんに医療が提供されるシステムになっています。同時に医師にできることはあくまで医学的な判断を下すことに限られているということを実感します。とくに今は一般内科をやっているので、診断・治療はもちろん大切ですが、適切に他科・他職種への紹介を行うことも非常に重要な業務です。

具体的には、外来ではScreening Colonoscopyが必要な患者さんはGI (消化器内科), 糖尿病患者さんはOphthalmology (眼科), Podiatry (足病科), 場合によってはEndocrinology (内分泌内科) に、変形性関節症で慢性疼痛のある患者さんはPhysical Therapy (理学療法), 場合によってはOrthopedics (整形外科), Pain Management (日本でいうところのペインクリニック) などに紹介します。ほか、Holter心電図、Urodynamicsなど、一般内科でオーダーできない特殊な検査が必要な場合も各専門科に紹介します。Home Care (日本でいうところの介護サービス) を受けている患者さんも多数おり、社会的背景が複雑で書類手続き等に特別なヘルプが必要な場合はSW (ソーシャルワーカー) によく相談します。

入院診療に関してはHospitalistの好みにもよりますが、全体的にコンサルトの閾値は低いです。心不全やACSではCardiology (循環器内科), 間質性肺炎ではPulmonary (呼吸器内科), 黄色ブドウ球菌菌血症やよくわからない感染症ではID (感染症内科), AKIではNephrology (腎臓内科) に、という具合でコンサルトが入らない症例のほうが珍しいです。さらに、退院調整は日々の病棟業務の大部分を占める重要な仕事ですが、かなりの部分をSWとPT/OT (理学・作業療法士) に依存することになります。SWは入院主治医チームと毎朝のInterdisciplinary Team Roundで情報を共有し、Case Managerと適宜連携しながら、自宅退院ならば退院日のTransportation (Metrocard (バス・地下鉄で帰る患者でお金がない場合)、Ambulette (いわゆる介護タクシーのような自動車)、Ambulance (救急車))やHome Health Aideの手配を行います。Homelessの患者さんは、希望があればShelterに入れるように適宜書類作成をします。また、いわゆるリハビリ転院はアメリカでも多いですが、医師が独断で転院調整を始めることはできず、必ずPT/OTの評価を受けて「SAR (subacute rehabilitation) への転院を推奨する」旨のカルテ記載がPT/OTによってされる必要があります。転院先の希望を患者さんと相談したり、実際に保険でカバーされるか調べて申請したりといった仕事もすべてSWの範疇になります。ほか、PT/OTによってDME (durable medical equipment, 杖、歩行器、車いすなど) が自宅に必要と判断され、医師が処方箋を依頼されることも多いです。

ICUでも、Attendingの好みによりますが他科・他職種との連携は不可欠です。コンサルトは上記と同様ですが、日本のように一般のICU PhysicianがECMOやCRRTの管理をすることはなく、それぞれCT surgery (心臓胸部外科), Nephrologyにコンサルトします (MSBIではECMOはやっていませんが、多くの施設でCTICUでECMO患者は管理されています)。また、Palliative Care (緩和ケア科) も非常に重要で、一番多いのは症状緩和ではなくGOC (goals of care) discussion, 要するに重症患者の治療方針の話し合いに同席してもらい助力を得る目的でのコンサルトです。これは日本でがんの緩和ケアぐらいしか目にしていなかった当初は面食らいましたが、実際の病状説明は主治医チームから行いPalliative CareチームはTerminal ExtubationやHospiceなどの詳しい説明や実際の手続きの担当などをしてくれるため、主治医チームがMedically Futileであると感じている症例の場合はFamily Meetingに同席してもらったほうがスムーズにいくことを実際に感じています。ほか、脳死判定にはNeurology (神経内科) の判定が必須なのと、臓器移植ドナーになる可能性がある症例では臓器移植コーディネーターに早期から連絡し、実際に移植に至る症例もたまにあります。

非常に多くのスタッフが各症例に関係するため、主担当医であるResident/Internや患者さんのコミュニケーションの多さ・複雑さは問題であると感じる場合もありますが、より多くの業務を短時間で完了させ患者アウトカムの改善、早期退院に寄与している部分も大きいと思っています。

CHEST参加のため、New Orleansに行ってきました。とんぼ返りでしたが名物のBeignet (ベニエ) をいただくことができました。

著者