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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (12)

講座だより

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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (12)

6/2021
「Surgical ICU」
Critical Care Medicineの面白いところは、原疾患に関わらず様々な重症患者の診療に関われるところだと思います。アメリカの特に大きな病院では専門分化が進んでいてICUの種類ごとに専門科の住み分けがある程度決まっており、URMCの成人部門ではMedical ICU, Surgical ICU, Neuro ICU, Cardiac ICU ,そしてBurn/Trauma ICUがあります。私はInternal MedicineのsubspecialtyとしてPulmonary and Critical Care Medicineを専攻しているので、MICUが必然的にメインになり、SICUとNeuro ICUは3年間の研修中に4週間のみが必須、他は任意となっています。PCCM出身者はAttendingになってからもMICUをメインに働くパターンが多いです。一般内科・呼吸器内科が重要なMICUでは高い専門性を発揮できる分、何でも診れる集中治療医になるのは少し難しい印象があります。
4-5月はSICUのローテーションがあり、MICUとは異なるセッティングでの研修は色々と興味深かったです。Surgicalですので基本的には(心臓以外の)大手術後の患者と、術後合併症などでICU入室が必要になった患者が入院してきます。また、院内ルールですが、肝硬変の患者、肝・腎移植後の患者は直近の手術の有無にかかわらずMICUではなくSICUに入院します。肝臓以外では、Aラインが入った血管外科術後の患者、食道全摘、喉頭全摘、Whipple procedure(膵頭十二指腸切除術)などの入室が多いです。消化管外科の大手術でOpen Abdomenになり抜管ができない患者や、重症肺高血圧症のある患者の腎移植、尿管ステント後の敗血症・心肺停止などもありました。PCAポンプや硬膜外麻酔などの術後鎮痛もMICUではほぼ診られないため、貴重です。AttendingもMICUとは異なり、麻酔科、移植感染症科、外傷外科とSubspecialtyが大きく違う3人と働きました。
そして肝臓ですが、URMCは肝移植を多く行っており毎日のように肝移植後の入室があります。肝不全で入院している患者はMELDスコアも高く優先的に肝臓が割り当てられるため、移植のプロセスはスピーディーです。胃・食道静脈瘤破裂、特発性細菌性腹膜炎、肝性脳症、肝肺症候群・門脈肺高血圧症、肝腎症候群、血小板減少・凝固障害などの重症病態を診断・治療して、肝移植レシピエントとしての評価が受けられる状態まで安定させることができたら、数日以内に新しい肝臓に入れ替えられてICUに再入室してきます。周術期の輸血管理には、リアルタイムで凝固因子や血小板の動態を知ることができるTEG (thromboelastography) を活用しています。移植後は移植外科Transplant Surgeryはもちろん、移植感染症科Transplant ID、移植腎臓内科Transplant Nephrology、移植薬剤師Transplant Pharmacyがそれぞれ介入し、予防・治療的抗微生物薬、腎代替療法、免疫抑制薬の管理を行ってくれます。SICUチームは各科からの推奨を吟味しつつ、人工呼吸器や輸液・輸血管理をメインに行います。術後出血、血種感染や胆汁漏などで再手術が必要な症例もありましたが、最終的には多くの患者でグラフトが生着し、腹水や腎不全も改善、ICU退室まで回復するのを見て肝移植の威力を実感しました。

RochesterのあるMonroe郡はNew York州の中のFinger Lakesと呼ばれる地域に属しています。縦に細長い湖が11個あり、豊かな自然に小さな街やワイナリーが点在する良いところです。写真はそのうちのひとつのLake Canandaiguaです。広い公園がたくさんあり、子供達を連れていくのにもよいところでした。

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