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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (21)

講座だより

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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (21)

3/2022
「Medical ICU⑤ Sepsis / Resistant Organisms」

最近はMICUのシフトが立て続けにあり、少し久しぶりに気管挿管やCVカテーテル挿入などをやりました。多数の患者がSepsis (敗血症) で循環・呼吸をはじめとした臓器不全の状態となって入院してきました。Sepsisは患者数が多く、集中治療領域で最も重要な疾患だと思います。最近はSurviving Sepsis Campaignガイドラインの改訂もありました (PMID: 34605781)。New York州ではSepsisの診療実態に関して病院が報告する義務があり、標準化されたプロトコルに基づき迅速な抗微生物薬や細胞外輸液の投与がなされることで治療成績の向上に役立っています (PMID: 28528569; PMID: 30189749) 。こうした仕組みづくりを政府レベルで行うのがアメリカらしいと思います。保険制度の関係上、診断基準がSepsis-2に基づいており今でもsevere sepsisといった呼称を用いているなど問題もありますが、標準化された治療プロトコルはよくある疾患を効率よく診療する上で非常に重要だと思わされます。病棟発症例では“Code Sepsis”が発動され、ICU Fellowと薬剤師が通常のrapid response teamに加わり迅速な治療介入とICUへの転送を決定します。

Sepsis Bundleには、血液培養の採取、乳酸値の測定、広域抗微生物薬(URMCではだいたいVancomycin / Piperacillin-tazobactamを選択します)の投与、30ml/kg以上の急速輸液が含まれます。輸液に反応しない場合(MAP <65 mmHg)、血管収縮薬を使用することになり基本的にICU入院となります。ICUではまずnorepinephrineから血管収縮薬を開始し、必要に応じてvasopressinを追加します。この段階になると相対的副腎不全の要素に対してhydrocortisone(可能ならfludrocortisoneも)を基本的に追加します。急速に悪化している場合は、耐性菌を考慮してアミノグリコシドであるtobramycinを追加で投与する場合もあります。感染源が制御できている場合はこれでだいたいなんとかなる印象ですが、呼吸不全、腎不全、脳症など急性期の全身管理がやはり重要です。

近隣の療養型病院から、慢性人工呼吸器管理の患者がSepsisで転送されてくることもよくあります。多くはVAP (人工呼吸器関連肺炎) やCAUTI (カテーテル関連尿路感染症) であり、耐性菌を考慮した治療が必要になることが多いです。Gram陽性菌はMRSA (methicillin耐性黄色ブドウ球菌) に対してはVancomycinを基本的に使用し、VRE (vancomycin耐性腸球菌) に対してはLinezolidやDaptomycinを使用します。ESBL (extended-spectrum beta-lactamase) 産生Gram陰性菌に対してはMeropenemやErtapenem, Carbapenemase産生Gram陰性腸内細菌に対してはMeropenem-vaborbactamやImipenem-cilastatin-relebactam、多剤耐性緑膿菌にはCeftazidime-avibactamやCeftolozane-tazobactam, それでも対応できない超多剤耐性Gram陰性菌 (Acinetobacter baumanii, Stenotrophomonas maltophiliaBurkholderia cepacia等) にはCefiderocolを使用します。基本的に感染症科コンサルトが入るので安心して使えますが、多剤耐性菌にはいつも悩まされます。

まだまだ冬は長く、1週間に1回はこのように銀世界になります。車の雪かきが大変なので、次は屋根のあるガレージ付きの家に引っ越したいと思ったりしています。

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