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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (20)

講座だより

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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (20)

2/2021
「Lung cancer screening / Lung nodule」
米国のプライマリケア(家庭医療・内科・小児科など)研修では、予防接種や生活習慣病・悪性疾患のスクリーニングを含む予防医学は必修項目です。基本的にはPCP (プライマリケア医) で色々なスクリーニング検査を行います。私のしているのは呼吸器内科専門外来なので糖尿病や大腸癌などはPCPに任せますが、呼吸器関係はPCPが手が回らないところを含めてなるべくカバーするようにしています。多くはCOPDの患者の慢性期管理の範疇になります。予防接種に関しては通常とあまり変わりありませんが、インフルエンザ、肺炎球菌、Tdap (破傷風・ジフテリア・百日咳) 、帯状疱疹 (不活化ワクチンであるShingrix®) 、そしてCOVIDに対するワクチン接種が推奨されています (2022 GOLD Reports – Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease – GOLD (goldcopd.org))。このうち肺炎球菌ワクチンは通常は65歳以上で全例接種が勧められていますが、COPDなどの慢性呼吸器疾患や喫煙者は65歳未満でもPPSV23 (Prevnar®) を接種することで重症の肺炎を予防するとされ、CDCが推奨しています (Pneumococcal Vaccine Timing for Adults-June 25, 2020 (cdc.gov))。
より複雑なのが肺癌のスクリーニングです。肺癌は日米ともに癌による死亡の1位であり、主にハイリスクな喫煙者がスクリーニングの対象となります。「肺がん検診」というと、日本では胸部X線と喀痰細胞診を行うと思いますが、少なくとも米国で行われた研究においては長期死亡率を改善させるというエビデンスは得られておらず (Mayo Lung Project: PMID: 10944552)、無症状者の検診目的では全く行われていません。米国のNLST試験 (PMID: 21714641) は低線量胸部CTと胸部X線、オランダ・ベルギーのNELSON試験 (PMID: 31995683)  は低線量胸部CTとno screeningをそれぞれ比較したRCTで、いずれも長期死亡率を改善するという結果でした。この結果を受けて、USPSTF (US Preventive Services Task Force) をは低線量胸部CTを1年毎に行うことを推奨しており、2021年に改訂されたガイドラインでは20 pack-year以上の喫煙者 (現在喫煙しているか、禁煙してから15年未満) でかつ年齢が50-80歳の者が対象になります (PMID: 33687470)。結果はLung-RADSというスコアリングシステムでカテゴライズされ、肺癌の可能性が高い場合はPET/CTや生検・肺切除術といった次のステップに進むこととなっています。米国に限らずよくあることだと思いますが、実際のガイドライン遵守率はまだまだ低く、実臨床でいかに漏れなくスクリーニングをしていくかは大きな課題となっています。保険がカバーする年齢が微妙に違っていたり、Shared decision makingに関してきちんとカルテ記載しないといけないということもあり、色々と難しいです。
スクリーニング以外に、外来や院内コンサルトでよくかかわるのがCTで偶発的に見つかったlung nodule (肺結節) の管理です。画像所見ではSolid, sub-solid (part-solid, ground-glass) の2種類に大別され、Fleischnerガイドライン (PMID: 28240562) にしたがって次のステップを決定します。ものすごく大雑把にいくと、基本的には6mm未満の結節は悪性の可能性はかなり低く、8mm以上だと要注意となります。大半はCTを数か月後に再検でよいですが、不安を与えずにかつフォローアップをきちんとする気にさせる患者説明が重要です。

Rochesterでは氷点下の日が続いていますが、仕事や学校は通常通りです。朝はこんな黄色いスクールバスが家の目の前まで来て、子供達を拾っていきます。

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