About

Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (19)

講座だより

Tap here to navigate

Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (19)

1/2022
「Sleep Medicine」
少し前になりますが、2週間のSleep Medicine (睡眠医学) の外来ローテーションを行ってきました。日本では呼吸器内科医が睡眠外来をやっていることが多い印象がありますが、これはアメリカでも同様です。米国呼吸器内科専門医試験の問題の10%程度はSleep Medicine (睡眠医学) に関するものであり、Pulmonary Fellowshipでは基本的にSleep Medicineのローテーションがあります。睡眠医学専門医になるためには1年のFellowshipを行う必要があり、応募は一般内科、家庭医療科、神経内科、小児科、麻酔科、精神科などのResidency修了者であれば受け付けられますが、これまで会ったSleep Medicineの医師はほぼ全員PulmonaryかNeurology (神経内科) をバックグラウンドとしていました。Sleep Medicineでみる代表的な疾患はObstructive Sleep Apnea (OSA: 閉塞性睡眠時無呼吸) とInsomnia (不眠症) であることをみても納得です。私はSleep Medicineの専門家になるつもりはないのですが、睡眠検査の解釈について基本的なことを学べたのと、OSAを始めとする睡眠呼吸障害に関するディスカッションは勉強になりました。
呼吸器内科外来では睡眠の問題が主訴となることは少ないですが、夜間の呼吸困難による覚醒や、原因が明らかでないPulmonary Hypertension (PH: 肺高血圧症) がある場合はなんらかのSleep-disordered breathingの可能性があるため、睡眠外来の要領で詳しく問診を行うようにします。肥満・男性・高齢・高血圧の既往、いびき、夜間無呼吸、日中の眠気 (Epworth Sleepiness Score等) や疲労感、首周囲径 >= 40cm からなるSTOP-BANG score (PMID: 18431116) がよく知られています。他に覚醒時の鼻閉、口渇、頭痛や、夜尿も重要な項目になります。
典型的なOSAの症状があり患者に治療希望がある場合は、Home Sleep Apnea Test (HSAT) をオーダーします。HSATではパルスオキシメトリ、口腔内の気流、胸郭の運動を計測します。心電図や脳波計を含まない簡便な検査ですがOSAに関しては十分な診断能を有しており、uAHI (unattended apnea-hypopnea index: 1時間あたりの無呼吸または低呼吸のエピソードの数) が5以上の場合はOSAと診断し、CPAPなどの治療を考えます。Central Sleep Apneaなど複雑な病態に関してはSleep Centerに一晩泊まって行うpolysomnographyが必要になります。
OSAの治療は基本的には夜間のCPAP使用で、最近は自動で圧を調整してくれるautotitrating PAP (APAP) がデフォルトになっています。外来でもOSAを診断した場合は自分でCPAPを処方し、再診の際はcompliance reportをCPAPの機械からダウンロードしてもらいアドヒアランスを評価します。CPAPに忍容性がない患者の場合は他の治療法を考える目的でSleep Medicineに紹介することが多いです。軽症例ではマウスピースを使うことがあるのと、中等症以上では手術療法、最近はInspireという舌下神経刺激デバイスも使われるようになっています。また、最近ではPhilips RespironicsというメーカーのCPAPがリコールになった影響で供給が不足しており、外来でもなかなか機械が届かないという問題をよく経験します。

Rochester界隈では少ないのですが、ハワイの料理であるPoke bowlを買い物中に見つけたのでいただきました。アメリカンな食事は好きな方ですが、やはりたまには生の魚が食べたくなります。

著者