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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (22)
講座だより
Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (22)
4/2022
「Medical ICU⑥ Clinical Protocols」
アメリカで臨床をしているとよく思うことですが、この疾患にはこの治療、という標準的化された管理が徹底しています。私はNY州の2つの施設で働いてきましたが、糖尿病の薬物治療は必ずMetforminから始めますし、心不全で使うACE阻害薬は基本的にLisinopril, β遮断薬はCarvedilolかMetoprolol Succinateです。画一的な教育システム(卒前・卒後両方)、担当医が定期的に変わるシステムのため他の医師の診療内容を参照しやすい、UpToDateや各種ガイドラインへのアクセスがよい(基本的に無料でオンラインでアクセス可能)、保険がカバーする薬剤が決まっている(例えば、保険によってSymbicort、Advairなど類似の薬剤でも患者負担額が異なりどちらかが好んで処方される)など多くの要因があると思いますが、大きいものの一つに治療プロトコールの存在があると思います。
ICUではあまりにも情報が多いため、ルーティーンを最小の労力でこなすシステムが特に重要になります。レジデントをしていた施設では電子カルテのシステムが古いなどの関係上かなりの労力を細かい調整に要しましたが、URMCではHeparin持続静注の流量調整、Vancomycinの用量・投与間隔調整などはプロトコールに従い看護師・薬剤師でやってくれるため、心配する必要がありません。オーダーセットは細かく組まれており、ICU入室時は1時間ごとのバイタルサイン確認、telemetry (心電図モニター) 装着、VTE予防、人工呼吸器設定・鎮静鎮痛薬や、各種カテーテル関係のオーダーが漏れなく入れられるようになっています。個々のオーダーについては集中治療専門医でないresidentが入れることが多いですが、Propofolをオーダーすると自動でCK, Triglycerideの採血オーダーが入ったり、血管収縮薬のオーダーには看護師指示 (Norepinephrine: 1st line vasopressor, MAP>=65を目標に5分毎に2µg/min増減、など) が組み込まれていたりと、抜けが出にくいように配慮されています。人工呼吸器設定に関してはICU attendingまたはfellowが調整することになっていますが、呼吸療法士が定期的に患者の状態をチェックしFiO2の調整や細かいトラブルシューティングを行い、朝は看護師とタイミングを合わせてSAT/SBTを行ってくれるため大変助かっています。COVID-19やDKA (糖尿病性ケトアシドーシス) など患者数の多い疾患に関しては院内の診療ガイドラインが電子カルテから参照できるようになっておりこれも役に立ちます。よくあるnonadherenceを契機としたDKAでは、DKAオーダーセットを使用するだけで1-2日でICU退室可能な状態まで改善できることが多いです。
ICU Liberation Consortiumが推進しているABCDEF bundleは全てのICU患者に使用でき、院内死亡率や入院日数といった重要な臨床的アウトカムを改善されるとされています (PMID: 28098628; PMID: 30339549)。URMCでは実際のプラクティスはまちまちですが、できるだけ回診に組み込むようにしています。ほかにもこれまでにもご紹介したことがあるRapid response system, Sepsis bundle, PERT (pulmonary embolism response team) など、施設のキャパシティとニーズに応じたシステム構築が重要になってくると思います。
この間はRochester市内にあるSeneca Park Zooに行ってきました。規模は小さめですがライオン、アフリカゾウやキリンなどしっかり展示されており家族で楽しめます。年パス会員です。