About

Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェロー シップの記録 (33)

講座だより

Tap here to navigate

Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (33)

3/2023

「Bronchiectasis」

Bronchiectasis (気管支拡張症) は喘息、COPD、ILDや肺癌などと比べると取り上げられることが少ないですが、罹患した患者は継続的なケアが必要であり重要な疾患です。最近出たNEJMの総説がよくまとまっています (PMID: 35947710)。何らかの炎症によって傷害された気道は正常な防御機構を失い、その結果細菌がColonize(定着)し、更なる炎症を起こすというのが基本的な病態です。

繰り返す喀痰、咳嗽、呼吸困難などで疑い、HRCT (高解像度CT) で気道の拡張をみて診断をつけます。その後は原因の検索と治療により肺機能の低下・増悪を予防することが主な治療目標になります。遺伝性疾患であるCystic Fibrosis (CF: 嚢胞性線維症) が特に重要ですが、他にも感染症(一般細菌、結核、非結核性抗酸菌症など)、気道疾患(喘息、ABPA, COPDなど)、嚥下機能障害やGERD (胃食道逆流症) による肺の炎症、先天性・後天性免疫不全(Common Variable Immune Deficiency (CVID) が代表的、ほかHIV感染症、造血器腫瘍など)、自己免疫疾患(関節リウマチ、Sjogren症候群、強皮症、炎症性腸疾患)、Primary ciliary dyskinesia (線毛機能不全症、鼻症状、不妊や内臓逆位(Kartagener症候群)などを伴う) 、Alpha-1 antitrypsin欠損症など、多くの原因があります。意外なことに米国発のガイドラインはないため、European Respiratory Society (ERS) のものをよく参照するのですが、同ガイドラインは血算・白血球分画、免疫グロブリン (IgG, IgM, IgA), ABPAの検査 (Aspergillus fumigatus IgE, IgG, etc) を最低限行うように推奨しています(PMID: 28889110)。これで原因が明らかでない場合はケースバイケースですが、治療可能な原因を見逃したくないので大体の場合はANA (抗核抗体), RF (rheumatoid factor), anti-CCP (cyclic citrullinated protein), anti-SSA/SSB, IgGサブクラス、HIV抗体、sweat chloride test (CFのスクリーニング) あたりを追加していき、さらに場合によってはより複雑な検査の目的で他科に紹介することになります。具体的には、線毛機能検査のためにENT (耳鼻咽喉科) に紹介したり、肺炎球菌や破傷風ワクチン前後の抗体価を測定するために免疫・膠原病科に紹介したりします。PFT (呼吸機能検査) は基本的に行うのと、あとは喀痰検査(必要なら気管支鏡的に採取)を行っておき、Pseudomonas aeruginosa (緑膿菌)がcolonizeしていないか評価します。

治療は細菌感染による増悪予防のため、気道クリアランス療法を行います。具体的にはAlbuterol。場合によっては高張食塩水の吸入を行った後、体位変換・胸部の刺激による理学療法をしたり、Acapella®やAerobika®といったoscillatory positive expiratory pressure (OPEP) deviceを使って意識的に喀痰を排出するように指導します。増悪が起こってしまった場合は可能なら喀痰を検査に提出してもらった後に、基本的に14日の全身抗菌薬投与を行います。安定している患者ではHaemophilus influenzaeがよくみられ、amoxicillinやamoxicillin-clavulanateでよくなることが多いですが、緑膿菌がいる場合はciprofloxacinやlevofloxacinを使わなければならず、耐性化してしまっていると入院・PICCを入れて静注抗菌薬投与になるのでやっかいです。増悪の頻度を減らす狙いで長期にマクロライド系抗菌薬を使用したり、緑膿菌のeradication (根絶) 目的で吸入アミノグリコシドを使ったりなど、色々奥の手はありますが現実的に難しい場合もよくあります。

Fellowとして呼吸器内科外来・入院コンサルトでも割とよく診ますが、専門医の中でもプラクティスはまちまちなので複数の指導医の間で右往左往する場合がけっこう多いです。若い患者が多いので、治療可能な原因を見逃さないように繰り返し評価すること、気道クリアランス療法を繰り返し指導することが重要と感じます。最近ではDPP-1阻害薬であるBrensocatibが期待されており (PMID: 32897034)、治療が大きく変わっていくかもしれません。URMCでは今年から気管支拡張症の専門外来も開設される予定です。

近所のグルメバーガー屋?に行ってきました。ハンバーガーは意外と飽きが来ないです。

著者