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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェロー シップの記録 (34)

講座だより

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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (34)

4/2023

「Hemoptysis」

呼吸器内科・Medical ICUをやっていると、Hemoptysis (喀血) の対応はわりとよく経験します。Fellow 1年目のICUローテーションで肺癌からのMassive Hemoptysis (大量喀血) による院内心肺停止の症例を経験し、最初の科内カンファレンスで発表したのをよく覚えています。原因疾患としては肺癌が多い印象ですが、気管支拡張症や肺膿瘍などによるものにも遭遇することがままあります。Non-massive hemoptysisの入院症例ではまずは凝固障害や抗血栓薬などの影響があれば拮抗薬を使うなどするのと、吸入トラネキサム酸については好みが分かれるところですが、個人的にはリスクは少ないので積極的に使っています。可能であれば患者に喀痰を保存しておいてもらい、定量的評価を行う(喀血の量が減ってきているか)のがよいです。

Massive hemoptysisは定義が一定しておらず、200-1000mL/24hr以上の喀血を指すとされていますが量自体よりも症状・全身状態のほうが重要です。気道閉塞による窒息を来し致死的となるため、ICU入院・緊急気管挿管が必要となります。胸部X線/造影CTなどで出血部位が推定できていればそちらを下にして、反対側の肺に血液が流れ込まないようにします。胸部外科手術で使うダブルルーメンチューブは内径が小さく吸引が難しいため基本的に使わず、8.5 mm 以上のシングルルーメンチューブで挿管するのが理想です。早期に気管支鏡を使ってどの肺葉から出血しているのかを確認しつつ、気管チューブの位置を調整(片肺挿管)ないし冷却生理食塩水やepinephrineの気管支内投与、Fogartyカテーテルやendobronchial blockerを使用して出血をコントロールします。片肺換気での最適な人工呼吸器設定は定まっていませんが、4-6 mL/kg PDW (predicted body weight) に設定して血液ガスを指標に調整します(PMID: 31374211)。根本的な治療はBAE (bronchial artery embolization: 米国ではInterventional Radiologyが行います) や胸部外科手術になるので、理想的には気道・呼吸の安定化と同時進行でコンサルテーションを行います。

外来では肺癌の患者をあまり見ないからか喀血を見ることは少ないですが、慢性気管支炎で間欠的に少量の喀血があるという患者さんを最近診療しました。胸部X線、胸部造影CT、気管支鏡と順番に行い、原因となる病変を同定することになります。エビデンスが比較的乏しい分野ですが、特にMassive hemoptysisでは迅速な対応ができるよう定期的に知識をリフレッシュするようにしています。

Jurassic Questという全米を回って行っている恐竜の展示・アトラクションがあったので行ってきました。子供が恐竜が好きなのは国が違っても変わらないようで、家族で楽しめました。

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