About

Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (35)

講座だより

Tap here to navigate

Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (35)

5/2023

「Medical ICU⑨ Cardiac Arrest」

3-4月はAnesthesia (麻酔科), MICU, Pulmonary Consultと、Fellowship最後となるmandatory clinical rotationが立て続けにありました。麻酔科ローテーションはDirect Laryngoscopyによる気管挿管の経験を積むのが主で、日本での臨床研修以来約8年ぶりでした。ICUではVideo Laryngoscopy (Glidescope®) ばかり使っているので新鮮でした。MICU、Pulmonary Consultともに忙しく6週間働きづめでしたが、ResidentがプレゼンテーションをするICU回診の進行役をしたり、attendingへの移行期間としてよい経験になりました。

MICUのローテーションをしているとほぼ常にPost-cardiac arrest (心肺停止蘇生後) の患者が1-2人は入院しています。今回のローテーションではかなり ”引く” ほうで、毎週のように院内心肺停止 (Hospital Code) の対応もありました。Code TeamはMICU resident / APP / fellow, Anesthesia (麻酔科) の挿管担当チーム、Critical Care Nurse, Pharmacistで構成されており、家族や医療従事者のスピリチュアルケアを補助するChaplainも現場にやってきます。慣れているResidentだと蘇生の指揮を率先して取ってくれることもありますが、大体の場合はMICU Fellowがリーダーとなります。ACLSプロトコルに沿ってCPR, マスク換気/気管挿管、除細動、Epinephrine, Amiodarone, Lidocaineなどの投与を行うほか、積極的にIV Fluid bolus, Calcium Chloride, Magnesium, Sodium Bicarbonateなどを投与します(施設によって違いがあると思います)。経験のあるスタッフが多く、IV/IOの確保や薬剤投与もスムーズで、患者家族に電話したり、LUCASやUltrasoundを持ってきてくれることもあり非常に重宝します。20分以上ROSC (return of spontaneous circulation) が得られない場合は蘇生を中止することが多いですが、比較的健康な患者でVF stormの場合、Massive PEがPOCUSで疑われる場合は原因治療につなげるためにVA-ECMOのチームを呼び、ベッドサイドでカニュレーションすることもあります。最近2つの除細動器を使って立て続けに除細動をするというプロトコルが発表されましたが、実際に使われているのはまだ見たことがありません(PMID: 36342151)。

ROSCが得られた場合、速やかにPost-cardiac arrest careのプロトコルに沿って治療を継続します。ICUベッドを手配してもらいつつ、Vital sign測定、12誘導心電図、血液ガス・乳酸値・心筋酵素を含む血液検査一式(”Rainbow Lab” といわれます)、胸部X線、POCUSなどを行います。IV Fluid, 血管収縮薬、鎮静鎮痛などを適宜使用しつつ、ICUに到着したらTTM (targeted temperature management) を開始します(意識が回復し指示に従う場合は不要)。呼吸・循環などの全身管理をMICU主科で行いますが、神経予後判定に関してはNeuromedicine ICUに基本的にコンサルトして、目標体温、脳画像検査や脳波検査などの方針を委ねることになっています。Esophageal cooling deviceや血管内デバイスも一応ありますが、基本的にArctic Sun®を使っています。TTM2 trial (PMID: 34133859) が発表されたり最近は33℃を目指さない施設も多いのではないかと思いますが、URMCでは臨床試験などの絡みもあり、明らかな害がない場合は33℃が好まれています。特に低体温を目指すと発生しやすいShiveringは脳の酸素消費量を増加させるため大敵で、Columbia Anti-shivering Protocol (PMID: 21210305) に則り程度に応じてshiveringの対応をします。24時間のTTMのあと、徐々に復温し、神経診察と検査結果が出そろった3-5日目にだいたい神経予後を推定、家族とGoals of Care Discussionを行うというのがよくある流れです。自立して社会生活を送れる可能性が低く、withdrawになることも多いですが、臓器移植など有意義な結果につながる可能性も常にあります。種々のプロトコルに沿ってベストを尽くしたCritical Careを提供することが重要と感じます。

Rochesterの観光名所のひとつにThe Strong National Museum of Play (和訳は”国立遊びの博物館” でしょうか) があります。メリーゴーランド、アーケードゲーム、だまし絵、任天堂のゲーム機の展示などあり、何度行っても飽きません。特に冬場は子供たちを連れて毎週のように遊びに行っています。

 

著者