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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (36)

講座だより

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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (36)

6/2023

「End of Clinical Training in the US」

ついに長かった米国でのトレーニングも終わりを迎えようとしています。こちらでは一応PGY6 (卒後トレーニング6年目) を名乗っていますが、日本での研修も入れると京大を卒業してからもう10年目になってしまいました。改めて振り返りをしてみたいと思います。

医学部高学年のときにご縁があり、米国で指導医をされている先生のところに見学に伺ったのがきっかけでした。臨床実習すら始まっておらず目指す医師像なども全く定まっていない中でしたが、スケールの大きな医療システムの元、多くの医師が母国語でもない英語を使いこなし専門的な手技・診療を堂々と行っている様に単純に憧れを抱き、米国臨床留学に向けて大きなモチベーションを得ることとなりました。学生時代の再度の短期留学、日本の初期臨床研修・在沖縄米国海軍病院でのFellowshipを行いつつUSMLE STEP1 / 2CK / 2CS / 3の試験を約4年かかって突破し、東京海上日動の「Nプログラム」のお陰で渡米できることが決まったのは2017年のことです。京大救急で勤務したのは渡米前の3か月だけでしたが、私のような変わり種も温かく迎えていただきました。日本の大学病院での医療を経験できたのは日米の違いを考える上で大きな財産になったと思っています。

3年間、Mount Sinai Beth Israel病院で内科臨床研修(Residency)を通して実際に異国で医療を行い、また外国人として家族で生活する大変さを学びました。貧困層や移民の多い地域に近い同病院でホームレス、薬物乱用、Language Barrierなど様々な社会問題を目の当たりにしたことがある意味一番インパクトのある体験でした。世界中から集まってきている他のResident達と、拙い英語でも一緒に働いたこともこれからずっと思い出すのだと思います。研究リソースは限られていましたが、2つ上のResidentが構築していたデータベースに飛びつき、週末と寝る前の時間も返上してデータ収集をすすめ、ATSやCHESTといった学会に演題をコンスタントに出すことができ、それが功を奏したのか大学病院の呼吸器・集中治療科Fellowshipプログラムにマッチすることができたのは幸運でした。

そして2020年春、引っ越し先を探しにRochesterに来ようと計画していた矢先にやってきたのがCOVID-19でした。渡米したときはもちろん、Queensの狭いアパートでロックダウンを経験することになるなど夢にも思っていませんでした。なんだかんだで感染することもなく、引っ越し・車の購入などもスムーズに済みましたが、必然的にFellowship前半のメインはCOVID-19となり、ARDSの治療や緩和ケアについて考える日が続きました。2020年冬はHighland Hospital ICUで毎日のように気管挿管をして過ごし、2年目で決まったメインの研究プロジェクトもCOVID-19関連となりました。2022年春、勤務先で第3子が生まれた数日後に自分がCOVID-19に初めて感染したときのことは一生忘れられないと思います。

そんな波乱万丈な米国臨床研修を過ごしたわけですが、内科・呼吸器の専門医試験、CCEeXAM (集中治療エコーの試験) には無事合格し、いくつか論文もPublishすることができ、何より家族で安全・健康で暮らすことができることのありがたみを実感しています。Fellowship卒業後は、University of Alabama at Birmingham (アラバマ大学バーミングハム校) でAttendingとして勤務することになりました。これまでの研修でお世話になった人たち、こちらで・日本から支えてくれる家族にはいつも感謝を忘れずこれからも挑戦を続けようと思います。

“Grand Canyon of the East” と称されるLetchworth国立公園に今年も家族で訪れることができました。快晴の中、子供達が滝壺に見つけた虹はRochester最後の思い出にふさわしい美しさでした。

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