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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(21)

講座だより

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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(20)

5/2025

「Medical ICU⑯ ICU Medications⑥」

先月はMICUのレジデントチームの担当でした。成り行きで朝の回診前にミニレクチャーをすることになりましたが、意外と受けがよかったのでやりがいがありました。

  1. 呼吸器系の薬剤気管支拡張薬は、短時間作用型のものはDuoneb (ipratropiumとalbuterolの合剤) が広く用いられています。長時間作用型の吸入薬は、以前は病院内採用の吸入薬を使用していたのですが、薬価の問題なのか最近すべての吸入薬は病院内ではネブライザー投与のものに変更することに決まっており、選択肢は限られます。ICSはbudesonide 12時間ごと、LABAはformoterol 12時間ごと、LAMAはrevefenacin 24時間ごとに変更します。Revefenacinは2018年にFDAに認可された新しい薬剤で、病院内よりも外来でのCOPD等の管理でたまに使うようになりました(通常のLAMA吸入薬がうまく使えない場合など)。気道分泌物がなかなか出せず痰詰まり・無気肺になっている場合では積極的にhypertonic saline (高張食塩水; 3%や7%) を使用して痰を出すように努力します。ほかにICU特有の薬剤としてはpulmonary vasodilator (肺血管拡張薬) があり、UABやほかの多くの施設ではprostacyclin analogである吸入epoprostenolを使用します。重症ARDSでは酸素化を少しよくする程度の効果ですが、ECMOを使用するか相談している間の時間稼ぎとしては意味があると思います。あとはWHO Group 2以外の肺高血圧症・右心不全がひどい場合も使うことが多いです。
  2. 消化器系の薬剤ICUに限ったものではありませんが、PPIは日常的に使用します。SUP (stress ulcer prophylaxis) のエビデンスは多くの臨床研究があるものの、投与による利益とリスクのバランスははっきりしないため、プロトコルは施設によって違います。前職のRochesterでは経腸栄養が入っていない患者を除きPPIやH2RAによる予防は行っていませんでしたが、UABでは主に人工呼吸器装着患者では問答無用でPPIを投与しています。用量はpantoprazole 40mg 経口または静注 1日1回(NGチューブからの投与の場合はesomeprazole)です。もともとGERD等でPPIやH2RAを服用している場合はSUPの適応(血小板減少、凝固異常、敗血症など)がなくても継続します。消化管出血の場合はpantoprazole 40mg 静注12時間ごとに投与するのが基本ですが、医師の好みによっては持続静注も行うことがあります。肝硬変患者の静脈瘤破裂による消化管出血ではoctreotideの持続静注も3日間行います。これもルーティンですが、毎日便通があったか確認し、理想的には毎日1回はあるように緩下剤を調整します。Stool softenerであるDocusateは数年前に効果がないとして採用が中止されましたが、最近Sennaも同様になくなりました。使える薬剤がMiralax (Polyethylene glycol 3350), Mg oxide, lactuloseぐらいしかなくなってしまいどうしたものかと思っています。オピオイドでイレウスになっているようなケースではmethylnaltrexoneを経腸投与して効果があることもあります。あとは、いわゆるOgilvie syndrome (急性偽性腸閉塞症) はたまに遭遇し、だいたい消化器内科にコンサルトしつつneostigmineを試します。

 先日、長男が6歳になり、日本人の集まりにケーキを持って行ってお祝いをしていただきました。甘いものは好きな方だと思うのですが、アメリカのケーキはfillingがものすごく甘く、たくさんは食べられません。

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