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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(27)

講座だより

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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(27)

 「Chronic Obstructive Pulmonary Disease ⑥Interventional therapy」
COPDの治療は最近は薬物治療(特に生物学的製剤)が注目されていますが、気管支鏡的手技も日々進歩しています。多くはまだ臨床試験の段階ですが、重症肺気腫に対するendobronchial valve (気管支バルブ) を用いたbronchoscopic lung volume reduction (BLVR) はFDAの認可を受けており、日常診療でも行っています。今回はBLVRを中心にまとめてみたいと思います。
BLVRの前に、まずはLung volume reduction surgery (LVRS) について少し書きます。これは名前の通り、病的変化の強い部分を外科的に切除して肺容量を小さくし、肺気腫にみられるair trapping・過膨張、それに由来する呼吸困難を改善しようという治療で、具体的には両方の肺から合計20-35%程度の容量を減らすこととされています。National Emphysema Treatment Trial (NETT) が代表的な臨床試験で、重症肺気腫患者(FEV1 15-45%predicted, TLC >= 100%predicted, RV >= 150%predicted, PaCO2 <= 60mmHg, PaO2 >= 45mmHg室内気、High-resolution CTで肺気腫がみられる、高度肥満、心不全、虚血性心疾患や肺高血圧などの併存症がない、禁煙済み、呼吸器リハビリテーション完了した者)においてLVRSと内科的治療で運動耐用能と2年生存率を比較しています。結果はNEJMに2003年に掲載されており (PMID 12759479)、全体としてはLVRS群で運動耐用能は改善するものの生存率には差がないということになっています。興味深いのはサブグループ解析で、肺上葉に気腫性変化が強くかつ術前の運動耐用能が低いグループは生存率が有意に改善、逆に上葉優位でなくかつ術前の運動耐用能が高いグループは生存率が悪化したという結果になっており、肺気腫の中でも特に選択されたグループでは有効性が高いことを示唆しています。ちなみにこの後者のグループでは運動耐用能にも改善はみられませんでした。LVRSは今でもGOLD Reportでは治療選択肢に入っていますが、BLVRの普及にも押されてか、実際にお目にかかったことはありません。
そして、非外科的に肺容量を減らす治療としてendobronchial valveが登場します。LVRSでは物理的に肺を切除していましたが、endobronchial valveは気管支鏡的に気腫性変化の強い肺葉に通じる気管支に設置され、吸気時には閉まり、呼気時に開くようになっています。結果として過膨張して周りの比較的正常な肺を圧迫していた部分が無気肺となり、残った肺が働ける空間が増えて呼吸困難が改善するというメカニズムです。2010年代にいくつか重要な臨床試験が行われており、2010年発表のVENT trial (PMID: 20860505) では、だいたい上記のNETT trialと同様の重症肺気腫で、特に葉間で気腫性変化の強さに差がある (heterogenous emphysema) 患者が選択され、BLVR群でFEV1や運動耐用能が改善することが示されました。これもサブグループ解析で、fissure completeness (葉間裂の完全性?日本語がはっきりしません) が高いグループでBLVRの効果が高かったことが示されています。2015年発表のSTELVIO trial (PMID: 26650153) は欧州の臨床試験で、治療対象肺葉のcollateral ventilationがない(HRCTの画像上fissure completenessが高い)患者を選択、さらに気管支鏡時にChartis® systemを用いてcollateral ventilationが実際にないことを確認できた場合のみrandomizeするというプロトコルです。Chartis systemは、気管支鏡を通じてバルーンのついたデバイスを治療対象の気管支に進め、バルーンで閉塞させたあと呼気時の気流が漸減、ゼロになればcollateral ventilationがないと判断するものです。結果としてはBLVR群で6か月時点のFEV1, FVCや運動耐用能が有意に改善しました。類似の結果が米国で行われたLIBERATE trial (PMID: 29787288) でも12か月のフォローアップで示されており、これらの結果をもとに2018年にPulmonx社のZephyr endobronchial valve® (Chartis systemも同社が開発しています) がFDAに認可され、続いて2019年にOlympus社のSpiration valve system®でも類似の結果が出ており(EMPROVE trial, PMID: 31365298)、FDA認可に至っています。
こうしてみると、同じCOPDと言ってもかなり限られた患者層でのみ考慮される治療ということが分かります。また、気胸(30%前後)、COPD増悪、感染症などのリスクもあります。UABではZephyr endobronchial valveを使用したBLVRを行っており、COPD専門外来でも同治療目的の紹介がよくありますが、その中で上記の臨床試験の条件に該当する患者を探すのはかなり大変です。初診でPFT (body plesthymography), 6-minute walk test, ABG, HRCTを行い、条件を満たす場合は心疾患などの除外(心臓超音波検査、運動負荷試験)を行い、リスクもある旨を説明しつつ最終的にはChartis systemでの確認ができて初めてBLVRを施行することになります。施行後は3日間入院して主に気胸のモニタリング、その後も定期通院をしてもらうことになります。月に1件あるかないかですが、機会を見つけて手技にも習熟したいと思っています。

Halloween前の恒例行事として、カボチャを収穫するpumpkin patchというのがあります。今年は日本人のご家族何組かとTennessee州まで2時間かけて行ってきました。写真のような広大なカボチャ畑から自分で気に入ったものを取る形式で、他にもCorn Mazeなどアトラクションがたくさんあり子供達は遊び足りないようでした。Rochesterのときもそうでしたが、アメリカの大規模農場はテーマパーク化しておりとても楽しいです。

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