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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(3)
講座だより
呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(3)
皆様
新たな環境に慣れるのは大変で、あっという間にHoliday Season, 年越しを迎えそうです。
11/2023
「Clinical Rotations at UAB」
10月はAttendingとして初めて入院患者の診療を行いました。これまでの連載でも取り上げたように米国の研修医(Resident / Fellow)はローテーション制ですが、Attendingも同様で多くのClinical Serviceをローテーションします。私は最初なのでPulmonary / Critical Care Medicineをジェネラルにやっていますが、多くのFacultyは自分のSubspecialtyに関係するローテーションを主にやるようになっていきます。だんだん全貌が分かってきたのでまとめてみようと思います。
まずは入院ローテーションです。UAB Hospitalは約1200床あり、PCCM Facultyは院内全てからの呼吸器内科的コンサルトを受けるPulmonary Consult Teamと、呼吸器的疾患の増悪による入院・人工呼吸器weaningを主に行うPulmonary Inpatient Unit、MICU (medical intensive care unit) ・MCCU (medical critical care unit – 名前が違うだけでほぼ同じ) が主な守備範囲になります。診療内容は他の施設のMICUとほぼ変わらず、急性呼吸不全、敗血症、DKA, 心肺停止蘇生後などです。Teaching Service (Resident / Fellow) とAPP Service (PA / NP) が合わせて5チームあり、MICU RED TeamはMET (Medical Emergency Team) も兼任しておりとても忙しいです。夜間はResident, Fellow, APPに加えPCCM attendingが必ず常駐し、これらのユニットとMETをカバーしています。他には把握している範囲ではCCU (cardiac care unit), CPCC (cardiopulmonary critical care ICU), HTICU (heart transplant ICU), SICU (surgical ICU), NICU (neurological ICU), TBICU (trauma/burn ICU) があります。CCUはcritical care medicine専門医でない循環器内科医によって管理されており、人工呼吸器等の管理はPCCMのコンサルタントが行います。肺移植やECMOの技術のある一部のPCCM FacultyはCPCCやHTICUでも働いています。他のICUはそれぞれ別のintensivistのグループによって管理されています(外科、脳神経内科、麻酔科など)。UABはInterventional Pulmonologistの人数が比較的多くFellowshipもあり、EBUS、Navigational Bronchoscopy、Percutaneous Tracheostomy, TPC (Tunnelled Pleural Catheter) などの手技はIP Consult Teamが別に受け持っています。
同様のチーム分け(Pulmonary Consult, ICU)が関連病院であるUAB HighlandsとVA Hospital (退役軍人病院) にもありますが、Attendingは掛け持ちになっています。私がPulmonary ConsultのときにHighlandsのICU AttendingはCritical Care Medicineの専門医のみの人だったので、UAB Hospitalの患者を診終わった後に移動してHighlandsのコンサルトを診るということもありました。
次は外来です。UABは関連病院が多く、州内の呼吸器内科的ニーズを満たすため離れた施設での外来ローテーションも多く組まれています。UAB Hospitalでの呼吸器内科初診+呼吸機能検査、約25分南に離れたHoover Clinic、約1時間南東に位置するRussell Medicalでの呼吸器内科外来を担当するのが各1人です。これらのローテーションの間は週4~4.5日、ひたすら一般呼吸器内科外来のみを行うのでICUとはまた違った大変さがあります。
最後にTele-ICUがあります。また改めて勉強してから書きたいと思いますが、米国では土地が広いため医療過疎地も大変多く、また病院・ICUがあっても集中治療専門医が常駐していないということがあり患者に最適な治療を提供するのが難しいという背景があります。そこでTele-ICUセンターに集中治療医が常駐し、複数の病院・ICUを遠隔管理するというシステムが誕生、ここにCOVID-19パンデミックが起こり、遠隔医療のシステムがさらに整備されました。UAB Hospital / Highlandsでは3人の集中治療専門医が常駐し、それぞれの院内に加えて約10の関連病院のICU診療のコンサルト・必要ならば転送の手配を行っています。
これらのローテーションはだいたい1週間、たまに2週間交代で組まれており、プラス自分の継続外来 (Continuity Clinic) があります。巨大な組織でローテーションも多くありシステムに慣れるまではだいぶ時間がかかりそうですが、やはり時間と役割分担がはっきり決まっていること、カンファレンスなどの参加強制もなく、臨床ローテーションがない週は自分の研究などに専念できるのはよいと感じています。日本のシステムが今後どうなっていくのか分かりませんが、医療者の時間管理を考慮したものにして研究・教育等の生産性を維持していくことが重要ではないかと思います。
写真は記事本文にもあるようにUABから約1時間離れたAlexander Cityという町にあるRussell Medicalです。Alexander Cityの人口は15000人程度ですが、周辺地域からの専門科診療、手術、入院を受け入れている重要なCommunity Hospitalです。前任の呼吸器内科医が辞任することになったため、UABから週替わりで呼吸器内科外来に出向しています。自宅からは約90分かかり、さすがに遠いのでホテルに滞在しています。