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「外傷手術講習会ASSET(米国外科学会主催)」に参加しました 

講座だより

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外傷手術講習会ASSET(米国外科学会主催)

2016年4月22日、アメリカ、メリーランド州ボルチモアで人の献体を用いた外傷手術の講習会を受講してきましたので、簡単ではありますがご紹介いたします。
近年、外傷患者の治療に際し、通常のがん治療と同じようなアプローチで望んだ場合、必ずしも治療成績が良いとはいえないことがわかってきました。そのために、外傷診療に特化した治療法、治療戦略を学ぶため、私は幾つかの外傷手術のための講習会を受講してきました。今回のASSETもその一つです。
ASSETとはAdvanced surgical Skills for Exposure in Traumaの頭文字をとったもので、アメリカの外科学会が主宰する講習会です。参加者は若い外科医が多く、時に中年の医師もいたり、私のように海外からの参加者もいるようです。
伊丹空港から成田、シカゴを経てワシントン国際空港に約20時間かけて到着。大きな町ではありますが、治安の悪い場所があったりするため、基本的にはあまり出歩きませんでした、というより3泊5日のスケジュールだったために、その時間がありませんでした。


講習会前日には引率していただいた佐藤先生の昔の同僚である、Rosemary A. Kozar先生にLevel 1 trauma centerを見学させていただきました。メリーランド大学病院では、通常のwalk inや内科疾患救急車のかかるERとは別に、外傷だと判断された患者が搬送される外傷ERがあり、そこでは年間8000台の救急車を受け入れているそうです。ヘリポートは3つあり、ほぼすべてのヘリコプターが着陸可能とのこと。体外循環装置も並列していくつも使えるようです。この集約型の病院が日本に当てはまるわけではありませんが、マンパワーと装備の充実具合は羨ましいものがあります。数多くこなすことによるメリットです。
その日の夜は千葉大学から臨床研究に訪れている松村先生とそのご家族と一緒に夕飯をいただきました。ボルチモアは港町、カニが有名で、カニのスパイス蒸しとでもいうのでしょうか?テーブルの上にいっぱいに出されたカニを専用の木槌で叩き、中身を食べるという豪快な食事でした。


講習会当日はスクラブに着替え、現地に集合。4人で1体を担当、4体のご遺体を使わせてもらい講習を行いました。事前にテキストを読んで予習しているため、基本的にはその知識をおさらいする形で進んでいきます。講習会のコンセプトとしては、外傷時の血管コントロールということになっています。上肢、下肢、頸部、胸部、腹部と重要な血管の露出方法と近位・遠位へのアプローチを学ぶことができました。講義、スタッフはもちろん英語でしたが、医学英語が使えればなんとか問題なく講習から学び取ることができました。


なかなかアメリカまで時間とお金をかけて講習には行けませんが、今後日本で受講ができるかもしれません。千葉大学で、2016年5月に第1回の講習が開催されております。こういった講習を通じて、日本全体の外傷診療の質が高まっていくことが重要だと感じています。 私の学んだことも、患者さんに還元できるように、今後も研鑽を積んでいきたいと思います。

(文責 邑田)

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