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Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(11)

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Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(11)

7/2018「CCU」
さて2年目が始まりましたが、最初の2週間は外来なので1年目とそう変わらない日々を過ごしています。後半は2週間内科病棟のチームリーダーなので、気合を入れていきたいと思います。

1年目の最後の4週間はCCU (Coronary Care Unit, 心臓集中治療室) のローテーションでした。Cardiology (循環器内科) の指導医をトップとし、Cardiology Fellow 1人、Resident 2人、Intern 2人のチーム編成です。ほとんどがACS (急性冠症候群) あるいは徐脈性不整脈や重症心不全に対するデバイス治療の患者さんですが、人工呼吸器、IABP、低体温療法なども扱います。LVADやECMO、心臓血管外科はないので場合によっては緊急で他院への搬送になったりして、スピードが求められます。
アメリカでは心疾患が死因の1位であるだけあって、Cardiologyは内科の中でも特に重要な科で人気も高いです(給料も高いです)。一般循環器の専門医になるためには内科3年間のあとにFellowshipを3年間やらなければならず、その後さらにInterventional CardiologyやElectrophysiologyなどの超専門研修をする人もいたりして、日本よりトレーニングは長いです。
日本ではSTEMI (ST上昇型急性心筋梗塞) に対してはPCI (経皮的冠動脈インターベンション) を行うのが主流だと思いますが、国土の広いアメリカではPCIが行える最寄りの病院まで4時間かかるということが普通に発生するので、tPAによる血栓溶解療法も重要な選択肢になります。沖縄のアメリカ海軍病院で研修していたときは循環器内科医が常駐していないのでMI疑いは日本の病院に緊急搬送になっていましたし、グアムの基地ではそもそもPCIをできる施設がないのでtPAをうちながらハワイの大病院まで軍用機で搬送になる場合がある、という話も耳にしました。大変です。
ACSに対してのDAPT (dual antiplatelet therapy) はaspirin + ticagrelorが基本です。ticagrelor (ブリリンタ) は私が研修医のときは保険収載されていませんでしたが(prasugrel (エフィエント) が出たぐらいの頃でした)、もう日本でも主流なのでしょうか?これに加えて、atorvastatin (リピトール) 1日80mgが問答無用で投与されます。
心不全の急性増悪に対しては利尿薬はfurosemideまたはbumetanideを大容量で使います。具体的にはfurosemide 80mg IV 8時間ごとが標準的で、なかなかとんでもない量です。効かない場合はfurosemide持続静注にしたり、サイアザイド系のmetolazoneを加えることがありますがnesiritide (=BNP, 日本ではhANP=carperitideですね) やtolvaptan (サムスカ) は使われません。
心房細動も非常によく遭遇しますが、一番よく使うのはβ遮断薬のmetoprolol (アメリカでは静注、1日2回経口、1日1回経口と剤型のラインナップが充実しています) で、Ca拮抗薬のdiltiazemやverapamilはあまり使いません。β遮断薬ではレートコントロールがうまくいかなかったり心機能が低い患者さんも多く、そういう場合は比較的気軽にamiodaroneを使っている印象です。もちろん専門医の監督の下での投与になりますが、一般内科医が一応こうした薬剤を使いこなせるようになるよう研修が組まれているのはよいと思いました。

写真はManhattanとQueensを結ぶQueensborough Bridgeです。East River沿いには公園があり景色もよく、フェリーで対岸にわたることもできます。たまにはゆっくりNYを満喫する時間もとるようにしています。

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