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Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(24)

講座だより

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Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(24)

8/2019
「Diabetes」
研修3年目ともなると、外来も担当患者数が増えかなり効率よくやらないとまわらなくなってきます。卒業した1つ上の学年のResident達が診ていた患者さんが引き継がれてくる場合もあり、今回の外来2週間は初対面の患者さんも多く予習に時間をかけて対処しています。No showもありますが毎日12人程度の患者さんの予約が入っています。外来では健康診断・予防的なことから急性疾患の対応まで幅広く行いますが、もっとも多いのはDiabetes (糖尿病) です。日本では一般外来診療の経験がなく、糖尿病の診療経験も少なかったですが、こちらに来てからかなりの数の患者さんを診療することができ勉強になっています。
日本の糖尿病診療がよくわかっていないので比較することは難しいですが、基本的にADA (American Diabetes Association) のガイドラインが毎年改訂されるのでそれに基づいて個々の患者さんに対応します。
HbA1C・随時血糖測定によるスクリーニングを適宜行い、糖尿病と診断された場合はlifestyle modificationのカウンセリング (食事、運動) を自分で行いつつCDE (Certified Diabetes Educator) に紹介し糖尿病についての包括的な患者教育を受けてもらいます。同時に、禁忌があったり非常に血糖値が高い場合を除き、薬物療法をMetforminから開始します。消化器系の副作用に注意して1000mg 1日2回まで増量します。3-6か月ごとに HbA1Cを再検しコントロールを確認します。
それでもtarget (だいたいHbA1C < 8%) が達成できない場合は2つ目の薬剤を追加します。最近はSGLT-2阻害薬に関してEvidenceが増え、GLP-1受容体作動薬とともに大血管合併症やCKDのある患者さんでは特に優先して使うようになりました。また多くの患者さんが肥満であり、体重に関してもこの2つは減少の方向に働くのでよく使っています。日本で研修をしていたとき(もう4-5年も前になってしまいましたので、今では違うかもしれませんが)はDPP-4阻害薬がよく処方されている印象でしたが、こちらでは薬価が高いなどの問題もありそんなに頻繁に使われません。またSU薬やthiazolidinedione系薬に関してもこちらで研修を始めたときと比べると処方することは少なくなりました。
合併症の対応としては、高血圧、脂質異常症のスクリーニングを行い、10-year ASCVD riskを算出しそれに応じてmoderateあるいはhigh intensity statin therapyを開始します。以前はAspirinをよく処方していましたが、ASCEND trial (Bowman L, Mafham M, Wallendszus K, et al. Effects of Aspirin for Primary Prevention in Persons with Diabetes Mellitus. N Engl J Med. 2018;379(16):1529-39) が出てからはほかに適応がない場合はむしろ処方を控えるようになりました。降圧薬が必要な場合は基本的にACE阻害薬を優先的に使用します。
小血管合併症に関しては、6か月から1年ごとに尿検査を行いmoderately increased albumiuria (いわゆるmicroalbumiuria) の有無を確認、1年に1回眼科診察(眼科に紹介)、およびmonofilament testを含めた詳細な足の診察を行います。また、こちらではPodiatry (「足病科」と訳します) が診療科として確立しており、足の変形や感覚低下などの異常があり糖尿病足病変のリスクが高い場合は紹介してco-managementするようにします。

最近研修の同期の日本人の先生方と同期会をしました。NYCはグルメには事欠きませんが、やはり日本食がたまには食べたくなります。

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