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Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(34)

講座だより

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Dr Maedaのニューヨーク奮戦記(34)

6/2020

「Graduation」

COVID-19も第一波が落ち着き、Mount Sinai Beth Israel病院ではいまだかつてないほど入院患者が少なくなるところまできました。最後の病棟ローテーションを終え、6月前半はPalliative Care Consult, 後半はVacationです(私を含め多くのレジデントは引っ越しに費やします)。本来は卒業パーティーと、卒業式典が開かれるのですがCOVID-19の影響で全てキャンセル、Zoomでの開催となりました。そんな中、人種差別に関連した痛ましい事件が起こりNYCでも抗議活動、それに紛れた破壊行為が発生しており最後までなかなか気が抜けません。COVID-19はこれからまだまだ第二波以降もあり得るので自分たちにできることを粛々とやるしかありません。

3年間、長いようで短く、得たものも失ったものもあると思います。鎌状赤血球症、嚢胞線維症、アルコール離脱症候群、オピオイド中毒などは日本でこんなに経験することはまずなかっただろうし、複雑な外来患者の慢性疾患管理・予防医療・術前診察などなんでもありの内科外来を毎回指導医にコンサルトしながら行うことで知識が幅広く整理されていくのを感じましたし、ICUでは脳死移植・終末期抜管など日本ではあまり広く行われていないであろう診療の実態を知ることができました。非常に多くの診療科・職種が分業して診療を行っているのをまとめ上げる総合内科という役割は大変ですが、有意義な時間でした。一方で、ある程度以上高度な内容は専門科にコンサルトとなり、自分主体で管理することが難しいこと、気管挿管などの手技が非常に少ないことは日本での研修を考えると物足りないと感じました。最後の数か月はCOVID-19により非常時対応となり、生活も一変しましたが無事に卒業できて本当に安心しています。

臨床のトレーニングをするだけなら日本の充実した研修病院で専門研修を行ったほうがよりレベルアップできたのかもしれませんが3年間、異国で仕事をしながら臨床研究もある程度経験することができ、渡米時からの目標であったFellowship Matchも無事に済み、まずは安心、これからが本番と思っています。日本から支援してくれた家族、1歳で渡米して元気に育ってくれている娘とこちらで生まれた息子、そしてCOVID-19やその他様々な困難の中NYCで一緒に暮らしながら支えてくれた妻には感謝しかありません。京大救急の先生方をはじめ日本の医療界にも貢献できるようにこれからの研修も頑張りたいと思います。

3年間勤務したMount Sinai Beth Israel病院は、今なおDowntown Manhattanで医療を必要とする住民の拠り所となっています。またいつかNYCに帰ってきたいものです。

著者