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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (14)

講座だより

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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (14)

8/2021

「Chronic Obstructive Pulmonary Disease ②exacerbations, antibiotics, oxygen, NIV, surgery」

前回に引き続きCOPD (Chronic Obstructive Pulmonary Disease: 慢性閉塞性肺疾患) についてです。呼吸器内科外来にやってくるCOPD患者の多くはExacerbation (増悪) を頻回に繰り返しており、増悪の頻度を減少させることは、肺機能、QOL、長期予後の改善に重要です。COPD増悪の超急性期管理は酸素・呼吸補助療法に加え、経口または静注でのステロイド、気管支拡張薬、抗菌薬(喀痰の膿性化がみられる and/or ICU入院を要する重症呼吸不全の場合)と比較的単純です。むしろ再入院しなくて済むように退院前・直後のフォローアップをしっかりすることのほうが漏れが出がちだと思っています。
禁煙が重要なのは言うまでもありませんが、住居環境の改善、Cocaine等吸入薬物に関する指導も重要です(ただし、実際に改善するのは難しい)。また、予防接種(インフルエンザ、肺炎球菌、百日咳、COVID)も漏れがあれば退院前のタイミングで接種を行っておくと効率的です。GOLDガイドライン(GOLD-REPORT-2021-v1.1-25Nov20_WMV.pdf (goldcopd.org))によるとCOPD増悪による入院があった場合は薬物治療を強化することになっています。LAMAまたはLABA単剤を使用している場合はもう片方を追加してAnoroなどのLAMA/LABA合剤にします。好酸球増多(>=100/µL, 特に>=300/µL)がある場合はICSを追加してもよく、TrelegyなどのLAMA/LABA/ICS合剤にescalationすることがよくあります。Pulmonary rehabilitationプログラムも症状の改善、増悪の減少に効果があるとされており、物理的に可能であれば紹介します。
吸入薬を最適化してもなお増悪を繰り返す場合、PDE-4 (phosphodiesterase-4) 阻害薬であるroflumilast、マクロライド系抗菌薬のazithromycinが選択肢になります。roflumilastはFEV1 <50%で慢性気管支炎の臨床像を呈する症例で、azithromycinはformer smokerで推奨されています。Roflumilastは消化器系の有害事象が問題となることが多くあまりお目にかかりませんが、azithromycinは外来でも比較的よく処方しています。250mg/日(PMID: 21864166)あるいは250mg 週3回 あるいは500mg 週3回が選択肢です。あまり有害事象が問題になった症例には遭遇していませんが、下痢などの消化器症状、耳毒性やQT延長があるのと、1年以上の長期にわたって服用した場合のリスクは不明なので注意が必要です。耐性菌発生の問題もあります。
進行したCOPDでは、LTOT (long-term oxygen therapy: 在宅酸素療法) を考慮します。PaO2 <=55mmHg / SpO2 <=88% (浮腫、多血症や肺性心の所見がある場合、PaO2 <=59 mmHg / SpO2 <=89%) で定義される重度の安静時・労作時低酸素血症がある場合はLTOTを導入し定期的に再評価を行います (PMID: 33185464) 。夜間NIVの有効性は議論がありますが、慢性的に高二酸化炭素血症(PaCO2 >45mmHg)がある場合はOSA (obstructive sleep apnea: 睡眠時無呼吸症候群) などの睡眠関連の問題のスクリーニングをすること、夜間NIVの使用が提案されています(PMID: 32795139)。
さらに、薬物治療、リハビリテーションを行ってもなお症状が持続する場合、外科治療を考慮します。大きなブラがある場合はブラ切除術が効果があることがあります。LVRS (lung volume reduction surgery) は耐術能があり肺気腫の分布にばらつきがある症例で効果があるとされています。最近ではendobronchial valveなどのBLVR (bronchoscopic lung volume reduction) も選択肢に追加され、URMCでもendobronchial valveをたまに行っています。最後の手段は肺移植ですが、うまくいっても移植後生存期間は5-7年程度となっています。

アメリカは夏休みが長いです。kindergarten (幼稚園) に入る前の娘にはサマーキャンプ (といっても日帰りですが) で運動してもらっています。

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