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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (26)

講座だより

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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (26)

8/2022

「Pulmonary Procedure② Interventional Pulmonology」

気管支鏡については以前にも書いたことがありますが、呼吸器内科・ICUの手技として非常に重要です。今回はそれに関係してInterventional Pulmonology(IP; 適切な日本語訳はわかりません)についてです。日本でIPというと間質性肺炎を思い浮かべると思いますが、米国ではIPといえば基本的にInterventional Pulmonologyのことを指します(間質性肺炎はILD: interstitial lung diseaseです)。

IPは比較的新しい専門分野で、呼吸器内科領域の手技をおもに行う専門診療科という位置付けです。米国では専門学会であるAABIP (American Association of Bronchology and Interventional Pulmonology) が1992年に設立、ここ10年程で急速にトレーニングプログラム・専門医試験が標準化され、ACGME(米国の卒後医学研修を監督する機関)が認定するFellowshipにももうすぐ加わるようです。通常の軟性気管支鏡(観察、BAL、気管支内・経気管支的生検、最近は施設によってはEBUSも)は一般呼吸器内科医も習熟している必要がありますが、より高度な手技(Navigational Bronchoscopy・Robotic Bronchoscopyによる末梢肺結節の経気管支的生検、軟性あるいは硬性気管支鏡を用いたDebulking・バルーン拡張・ステント・レーザー・Cautery・Cryobiopsy・気管内異物除去・気管支サーモプラスティ、Endobronchial Valveなどの複雑な手技)はInterventional Pulmonologistに回ってきます。気管支鏡を用いたICUでの経皮的気管切開も守備範囲です。気管支鏡以外では、皮下トンネル式胸腔カテーテル(PleurX)・胸腔鏡検査など胸膜疾患に関連した複雑な手技も行います。

以前は手技の経験を積んだ医師がAABIPから認定を受けることでInterventional Pulmonologistを名乗っていましたが、2017年以降は一般呼吸器内科のFellowshipを終えた後1年間のIP Fellowshipを行い、専門医試験に合格することが必要となっています。似たようなところでは、Cardiology (循環器内科) ではより古くからInterventional Cardiologyが専門として確立しており、1年間追加のInterventional Cardiology Fellowshipを行った者がPCI (percutaneous coronary intervention) やTAVR (transcatheter aortic valve replacement) などの手技を専ら行うという体制になっています。余談ですが、Cardiologyは特にSubspecialty Fellowshipが多く、Cardiac Electrophysiology(不整脈), Advanced Cardiac Imaging(超音波・心臓MRI等), Advanced Heart Failure / Transplant Cardiology(心不全・LVAD・心移植など), Cardiovascular Critical Care (心血管集中治療), Adult Congenital Heart Disease(先天性心疾患)などがあるようです。どの分野でもそうですが、医療が複雑化するにつれて超専門化、集約化がやはり進んでいます。

IP Fellowshipは全米でも40プログラムほどしかなく、多くは大規模ながんセンター・肺移植プログラムなどのあるhigh volume centerです。URMCはUpstate New Yorkでは最大のがんセンターを持っていますが、肺移植は行っておらず、IP Fellowshipは現在のところありません。AABIPの認定を受けたInterventional Pulmonologistが1人と、気管支鏡・Thoracic Oncology関連の専門外来を主に行っているPulmonary Attending 2人で外来・入院の複雑な気管支鏡を行っています。2年目・3年目フェローは週替わりで気管支鏡の当番があり、外来の手技を一緒に行います。重要なところはAttendingがやりますが、Navigational Bronchoscopyを用いた末梢肺結節の生検やEndobronchial Valveなどを一緒に行うことができ、一般呼吸器内科のFellowshipの範疇を超えた手技も経験できるので我々にとってはプラスに働いています(IP Fellowshipがある施設では、IP Fellowにそういった手技が集中します)。最近Robotic Bronchoscopy (Ion®) が導入され、Attendingもトレーニング中である関係でFellowの関与は少なくなっていますが、卒業までに一通り経験し一般的な手技は自分でできるように頑張りたいと思います。

San Franciscoは坂がとても多く、ケーブルカーが有名です。Fisherman’s Wharfに行った際に写真を撮っただけですが、風情があります。

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