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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (5)

講座だより

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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (5)

11/2020
「Medical ICU② Ventilator Management / ARDS / COVID-19」
Strong Memorial HospitalでのMICUローテーションの2回目を行っています。だいぶシステムにも慣れ、ABIM (American Board of Internal Medicine: 米国内科専門医試験) にも無事合格したのでさらに学びを深めるべく主要な論文を読みなおしたりしています。
最近はARDS (Acute Respiratory Distress Syndrome) の症例が特に多い印象です。ARDSを始め、呼吸不全患者の管理はMedical ICUでは当然非常に重要です。人工呼吸器の設定変更は基本的にはAttending, FellowあるいはRRT (Registered Respiratory Therapist: 呼吸療法士) の裁量で行い、Residentが単独で人工呼吸器に触ることはあまりありません。ARDSかどうかにかかわらず、挿管された患者に対してはまずはAC/VC modeで、Tidal Volume 6ml/kg predicted body weightとし、Plateau Pressure <=30を目標としたLow Tidal Volume Ventilationを開始し、適宜血液ガスをモニターしながら設定を調整します。RRTは人工呼吸器を扱う専門職で、NIVやHigh Flow Nasal Cannulaの調整にも関わるほか、外来ではPFT (呼吸機能検査) も行っています。ICUにはRRTが常駐しており、人工呼吸器のセットアップやトラブルシューティング、ABGの採血、FiO2の調整、SBT、抜管などやってくれるため非常に頼りになる存在です。
Moderate-severe ARDSでは人工呼吸器の調整に加え他の標準治療を漏れなく行います。腹臥位換気はNYCの職場ではあまり施設レベルでの経験がなく、COVID-19が発生してから初めて導入された(せざるを得なかった)のですが、こちらではICUスタッフも経験豊富なのでP/F ratio <150となった症例では基本的に早期に夜間の腹臥位換気を行っています。大抵の場合酸素化が目に見えて改善し、威力を実感します。筋弛緩薬はROSE trial (PMID: 31112383)では有効性が示されませんでしたが、深鎮静にも関わらず人工呼吸器に同調できない場合は積極的にAtracurium持続静注を使用しています。さらに奥の手としてFlolan®(Epoprostenol) 吸入もよく使用しています。このレベルになるとCardiac ICUの担当にECMOの適応評価をお願いすることが多いですが、原疾患の治療により改善しECMOは結局不要となるケースが多い印象です。
COVID-19に関してはRochester周辺の重症症例は全てSMHに集まってくるのでそれなりの症例数がありますが、現在はまだCOVID ICUチームが通常のMICUチームに加えて機能しているので、FellowとしてCOVIDに関わることはあまりありません。入院症例はRECOVERY trial (PMID: 32678530) に基づき、dexamethasone 6mg/日を投与するほか、臨床試験も行われています。NYCでは重症例ではARDSに準じた肺保護戦略と、DEXA-ARDS trial (32043986) をもとにdexamethasone 20mg /日を5日間、10mg /日を5日間というレジメンが試されていました。アメリカ全土ではまだまだ数万人単位で患者が毎日発生しており先が見えませんが、 未知の疾患からCommon Diseaseに認識が変わってきている印象です。

家族でAsian pear pickingに行ってきました。子供達も楽しんでいました。

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