About

Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (9)

講座だより

Tap here to navigate

Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (9)

3/2021
「Pulmonary Procedure① Bronchoscopy」

呼吸器内科の主要な検査のひとつにBronchoscopy (気管支鏡検査) があります。Procedureローテーションでは3週間ひたすら外来および入院患者の気管支鏡検査を行い経験を積みます。患者が処置室に到着すると看護師がまず問診を行い絶食・抗血栓薬の中断などを確認後、末梢静脈ラインをとってくれます。その後Fellowが呼ばれ、手技および鎮静に関してinformed consentを行い、全身状態の評価(Mallampati分類、ASA-PSなど)を行いカルテ記載をします。準備ができたらAttendingに知らせて、Lidocaineネブライザーで咽頭の局所麻酔を開始します。これが終わったらMidazolam・Fentanylを投与、Bite blockを装着して気管支鏡を開始します。Moderate sedation (鎮静) は必ずattendingがいる状態で行うことになっています。困難が予想される症例では麻酔科医を動員して全身麻酔下に行います。

比較的手軽にできるのはairway inspection / BAL (気管支肺胞洗浄) で、改善しない肺炎や免疫不全患者の肺炎でよく行われます。通常の気管支鏡を用いて基本的には右肺中葉あるいは左肺舌区でBALを行い、順調にいけば20分もかからずに終了します。

診断が不明な肺結節や縦郭リンパ節腫脹となると、生検が必要なためもう少し複雑になります。肺癌や悪性リンパ腫などの悪性疾患が最も重要ですが、サルコイドーシスや結核のこともあり、またAspergillosisやHistoplasmosis (Histoplasma capsulatumによる感染症などの真菌感染症もあります。Histoplasmosisは日本ではあまりない疾患だと思いますが、北米の中部~東部、OhioやMississippi川周辺を中心に流行する真菌感染症で、肺炎、空洞性病変、肺門部・縦郭リンパ節腫脹、関節炎、結節性紅斑など肺癌やサルコイドーシスに類似した症状を起こします。治療は基本的にitraconazoleを使用します。生検のアプローチは事前に病歴・検査結果を見て症例ごとにAttendingと相談して決定します。

基本的に肺癌疑いの場合はまずEBUS (endobronchial ultrasound: 気管支内超音波) scope を用いて肺病変と対側の肺門リンパ節から順番に観察・可能ならばFNA (fine needle aspiration: 針吸引生検) を行っていきます。対側から始める理由は、その方が最も効率よくStagingを行えるのと、また同側のリンパ節で悪性細胞を得てから対側に移動した場合、N3 偽陽性となり治療方針に重大な影響を与えるおそれがあります。具体的には、Stage  II-IIIAのNSCLC  (non-small cell lung cancer: 非小細胞癌) がStage IIIB以上となり手術適応がなくなります。SCLC (小細胞癌: small cell lung cancer) でもLimited stageがExtensive stageとなって放射線治療が適応でなくなり、いずれでも根治が不可能と判断されることになります。リンパ節ごとに最低3回はFNAを行い十分な量の検体をcell blockで提出します。気管支鏡検査室の隣にOn-site path (迅速病理) があるので、 悪性らしき細胞があるかはすぐにわかります。基本的にon-site pathで悪性と判明した場合はその時点でStagingもできているので、当該病変から十分量の検体が採取できた時点で終了します。NSCLCらしい場合は特に念入りに検体を採取しPD-L1, EGFR, ALKなどのmolecular analysisができるように量を確保します。悪性細胞が得られない場合は順番に肺病変側に向かってリンパ節生検を繰り返していきます。

リンパ節から診断が得られない場合は、肺病変の生検を行うことになります。SMHではENB (electromagnetic navigation for bronchoscopy) が行えるので非常に便利です。気管支鏡からGuide sheathを第2分枝以降の細い気管支に挿入し、この位置情報と事前のCT画像を用いて気管支をマッピングしてくれます。準備ができたらGuide sheathを病変の近くまで進め、その内腔からradial EBUSを出して病変を確認、場合によりX線透視も組み合わせてTBBx (transbronchial biopsy: 経気管支的生検) を行います。

1週間のvacation期間中は、子供のpreschoolのお迎えなどもできリフレッシュできました。ある程度気温が高ければ雪遊びも学校でしてくれるようです。

著者