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Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェロー シップの記録 (32)
講座だより
Dr. Maedaの呼吸器集中治療科フェローシップの記録 (32)
2/2023
「Smoking Cessation」
専門医試験の結果が発表され、無事に米国呼吸器専門医になれました。実際の診療はまだまだ理想的とはいえないですが、引き続き精進しようと思います。最終的に呼吸器・集中治療のどちらをメインにするかは悩ましいところですが、研究テーマも含めてうまく落としどころを見つけていきたいと思っています。
今回は呼吸器内科ではもちろん、一般外来でのマネジメントも重要なたばこ喫煙についてです。米国でのたばこ喫煙の有病率は12%強となっています(CDC: https://www.cdc.gov/tobacco/campaign/tips/resources/data/cigarette-smoking-in-united-states.html)。いうまでもなくたばこ喫煙は主要な健康上のリスクであり、医療者は問診によるスクリーニングを行い、喫煙者に対してはカウンセリング・薬物療法を勧めることが求められます(US Preventive Services Task Force:https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/tobacco-use-in-adults-and-pregnant-women-counseling-and-interventions)。一般外来研修で習う手法としては、5As(Ask, Advise, Assess, Assist, Arrange)が有名です。まずは喫煙の有無を尋ね(Ask)、喫煙者には禁煙を勧めます(Advise)。禁煙の意思があるかを評価し(Assess)、近い将来に禁煙を考えているあるいは既に行動変容を起こしている患者に対してはカウンセリング・薬物療法を処方します(Assist)。禁煙する日を設定し、理想的には1-2週間後にフォローアップを予定します(Arrange)。
薬物療法の選択肢はVarenicline (Chantix), Nicotine Replacement Therapy (NRT), Bupropion (Wellbutrin) があり、基本的にはこの順に推奨されています。Vareniclineはニコチン受容体の部分的agonistであり、ニコチン依存(離脱症状)を軽減するほか、ニコチン使用時のrewardingも減らすため禁煙効果が高いと考えられています。精神疾患を増悪させる心配がありましたが、EAGLES trial (PMID: 27116918) の結果などを踏まえて、大きな心配はないというのがコンセンサスになっています。ほぼ全ての状況でVareniclineが第一選択(NRTとの併用も可)となりますが、妊娠中の使用に関してはデータが少なく、NRTまたはBupropionを優先して使用します。NRTは長時間作用型のパッチと、短時間作用型のガム、飴、吸入器などを併用します。禁煙の1週間程度前から服用しないといけないVareniclineやBupropionとは異なり、いきなり禁煙後に使っても離脱症状が抑制されるので周術期や入院中の禁煙に適しています。Bupropionは単純に効果が他2つと比較して低いのと、痙攣発作の発生閾値を下げるので使いにくいですが、体重を減少させる方向に働くので、既に肥満が問題になっている患者では優先度が上がります。
カウンセリング(英語ではBehavioral interventionなどといいます)は、患者の好み次第で施設の持っている禁煙プログラムに紹介したり、SmokefreeTXT (https://smokefree.gov/tools-tips/text-programs/quit-for-good/smokefreetxt), NYSQuitline (https://www.nysmokefree.com/) などの公的プログラムを勧めたりすることが多いです。禁煙の意思が固まっていない患者に対してはmotivational interview(動機付け面接)の手法が効果的とされています。呼吸器内科外来にやってくる喘息・COPDもちの喫煙患者にとっては禁煙指導が最も重要な治療介入である場面は少なくないので、患者さんと試行錯誤しながら学んでいます。
年末年始の3連休は比較的寒さがましだったので、家族でカナダ最大の都市Torontoに家族旅行に行きました。Rochesterからは車で3時間で、NYCに行く半分程度の時間で行けます。人口は10倍、日本人コミュニティも圧倒的に大きく、久しぶりの大都会・日本食を楽しみました。写真は北米一高いCN Towerです。