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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(4)

講座だより

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呼吸器・集中治療医Dr. Maedaの武者修行 in Alabama(4)

12/2023

「Pulmonary / Special Care Unit」

 11月は2回目のRussell Medical(Birminghamから1時間以上離れたAlexander Cityにある医療施設)の呼吸器内科外来に続き、集中治療専門医試験をはさんでPulmonary / Special Care Unitの12連勤があり、その後はThanksgiving Holidayもあり怒涛のように過ぎていきました。今回は同Unitのローテーションについて書きたいと思います。

 通称S6と呼ばれるSpain Building 6階の病棟はPulmonaryがカバーする専門病棟となっています。呼吸器内科外来から送り込まれてくるDirect Admissionが多く、内容はInterstitial Lung Disease(ILD: 間質性肺炎)の急性増悪、Cystic Fibrosis (CF: 嚢胞性線維症) やnon-CF Bronchiectasis (非CF気管支拡張症) の増悪で静注抗菌薬が必要な場合、COPD / Emphysema (肺気腫) のEndobronchial Valve (気管支バルブ) 術後などがあります。また、CF Clinicかかりつけの患者は他の理由でもこちらの病棟に入院します。通常の救急外来経由で入院する細菌性肺炎やCOPD増悪は一般内科(Hospital Medicine)に振り分けられるので、微妙に違った患者群を相手にすることになります。

 これらに加え、同病棟内のうち6床はSpecial Care Unit (SCU) と呼ばれ、ICUで気管切開を受けたあと安定化し人工呼吸器weaning・集中的なリハビリが重要な患者が集まるユニットとなっています。UAB外の嘱託組織からのスタッフが来て週5回のPhysical・Occupational・Speech Therapyを行うほか、Respiratory Therapist・Nursing Staff・Speech Therapyでプロトコルに則りPressure support / Trach collar trial, speaking valve, capping trialを進めてくれます。意識が安定してリハビリに十分参加でき、何らかの人工呼吸器weaningが進行中の患者が入室対象となります。MICUでよく診る急性呼吸不全からの気管切開患者だけでなく、外傷・重症熱傷や大手術後の合併症でTrauma・Surgical ICUに長期入室・気管切開となった患者も多く入室してきます。Decannulation (気管切開チューブ抜去) までこぎつけることができない場合も多くありますが、ICUでは週5回のリハビリはスタッフの人数的にできない場合が多いのでよりrecoveryに適した環境といえます。若くて既存症の少ない患者はやはり回復が早く、Decannulation後はUAB Hospital内のSpain Rehabilitation Center(厳密には別の病院)にリハビリ転院、または自宅退院できる場合もあります。PM&R (Physical Medicine & Rehabilitation: リハビリテーション科) との連携もルーティーンで行っているためケアの移行もスムーズです。

 Attendingの主な仕事は、主担当であるAPP (Nurse Practitioner / Physician Assistant) と回診を毎日行い治療方針を決定、患者・家族に説明すること、カルテや特定のオーダーのattestation (承認)・追記を行うことです。だいたい25-30人程度の患者がおりAPPは4-5人で患者を分担しています、朝8時半から回診を始めて、各APPと2人で病棟を歩き回るのを人数分繰り返し、昼食を挟んで2-3時までかかる場合が多かったです。そこからひたすらカルテ記載をして終わるのは夕方になります。Fellowもローテーションしているため一緒に回診したり、あるいは2組に分かれてあとで要点だけ伝えてもらうようにしたり、いろいろ試してみました。細かいところはAPPでやってくれますが、ステロイドや抗菌薬の用量・継続期間を決めたり、気管支鏡などの手技も行うためかなり忙しいです。Herpes Simplex Virus肺炎や重症CFの増悪など普段目にしない症例もありました。自分が主治医でHospital Medicine的な管理を行う点は日本の呼吸器内科医の病棟管理に似ており、痰詰まりなどの急変もそこそこの頻度で起こり、なんだか自然に日本の臨床研修が思い出されました。

Thanksgivingの週末は、北に90分ほど離れたHuntsvilleにあるUS Space & Rocket Centerに家族で行ってきました。実際に月まで飛行したロケットやスペースシャトルが展示してあり、1日中楽しめました。

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